「億り人」になる投資術とは(写真:Ned Snowman/Shutterstock.com)
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フリーランスの麻酔科医でもあり、ボルダリングジム経営者でもある個人投資家のたーちゃん氏は、緻密な財務分析、業界研究により、元手50万円から始めた株式投資で資産70億円を築いた。この間、40代でがんを宣告され、49歳で肺と肝臓へのがん転移が判明。主治医からは「50歳は迎えられても、51歳は分からない」と宣告された。50歳を前に、2人の愛娘に向けて投資手法を指南するスタイルで出版した『50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え』(ダイヤモンド社)は7月2日の発売後、わずか5日で9万部を突破した。たーちゃん氏に、投資手法やFIRE(Financial Independence, Retire Early)への考え方について聞いた。(2回に分けて掲載)。

(種市 房子:ライター)

(後編)「業スー」の大化けを確信したワケ、個人投資家たーちゃんが明かすバリュー株投資の極意…FIREはしないほうがいい

——現在の資産残高と投資手法を教えてください。

たーちゃん:安く買って、高く売るバリュー投資で約20銘柄に投資しています。20代で50万円から始めまして、資産残高は、著書制作時点では50億円でしたが、現在は70億円です。

——最近の注目セクターや注目銘柄を教えてください。

たーちゃん:土木、ガラス、工具関連銘柄には注目しています。ウクライナ戦争が終結し復興需要が発生すれば、世界的にインフラ資材はひっ迫するからです。

 個別銘柄としては、業務用冷蔵庫のヨコレイがあります。業務用冷蔵庫事業者は集約化されており、寡占化が進むとみられます。ヨコレイは、バリュエーション(企業価値評価)から見ても魅力的でしょう。

 造船業界にも注目しており、韓国のHD韓国造船海洋に投資しています。HD韓国造船海洋の2025年1~3月期の営業利益率は12.7%。受注水準、今後の船の価格上昇、為替、コスト構造を分析すると、営業利益率は25%程度まで伸びる余地があるとみています。

たーちゃん 1975年兵庫県生まれ。広島大学医学部卒の現役麻酔科医。1998年、元手50万円で株式投資をスタート。バリュー株主体の投資で2005年に1億円、2020年に10億円、2024年に50億円に到達する。2022年がんが発見され、翌年がんが再発。4度の手術を経て2024年、49歳で肺と肝臓へのがん転移が判明。主治医からは「50歳は迎えられても、51歳は分からない」と宣告される。著書『50万円を50億円に増やした 投資家の父から娘への教え』(ダイヤモンド社)では、バリュー株の探し方、売り時、確認するべき指標を詳細に解説している。 X(@yhdgj675)は約3万フォロワー。(イラスト:Meppelstatt)

——なぜ今、造船業界なのでしょうか。

たーちゃん:世界の造船メーカーは中国勢の台頭もあり、2010年前後に淘汰が進みました。しかし、2020年以降、太陽光発電促進の揺り戻しから石炭火力発電の需要が高まり、一般炭(発電用石炭)を運搬する船の需要が高まりました。エネルギーと密接にかかわっている業界であり、シクリカルバリュー株(景気循環株)でもあります。アメリカで巡洋艦の更新需要が見込まれていることも追い風になっています。

——シクリカルバリュー株とはなんでしょうか。