情報の事前承認、違反すれば記者証没収
そもそも新ルールとは何か。
「完全な公式ルール集」が公開されているわけではないが、報道各社・調査報道機関等により報じられている内容をもとに、現時点で分かっている主なルール・制限は次の通りだ。
●情報の事前承認義務
国防総省が発行した内部メモには、記者に対し「未承認情報(機密および一部の非機密を含む)の取得・公表を禁じる旨の文書への署名(ルールの承知)が求められ、違反時は記者証剥奪の可能性がある」との条項を含む合意書への署名を求めている。
●記者証の没収・更新拒否
ルールに署名しない、またはルール違反と判断された記者・報道機関には、国防総省の記者証を剥奪、更新拒否、施設アクセスの停止があり得るとされている。
●建物内の移動制限・政府職員の同行エスコート義務
記者が自由に回廊を歩き回ることを認めないとされる表現や、職員が同行・ガイドすることを要請する文言が含まれている。
●「不適切行為」「混乱行為」の禁止
記者が 「国防総省の運営を妨げる可能性のある不適切行為」を行ったと判断された場合、アクセス制限や撤去を命じる可能性がある。
●記者ルール・方針への「署名・同意」義務
記者・報道機関に、新ルールを理解し遵守し合意する旨の書面(合意書/誓約書)にサインすることを求める。
●報道自由 vs. 国家安全保障の調整強化
国防機密、作戦上の秘密、情報セキュリティ、施設安全などを理由に、報道アクセスの制限・検閲的な承認制度を正当化する方針が強調されている。
国防総省当局はこれら変更を「常識的なガイドライン(common sense guidelines)」と称しており、「報道の妨害ではなく安全保障確保」が目的であると主張している。
(Pentagon demands journalists pledge to not obtain unauthorized material - The Washington Post)
(Pentagon steps up media restrictions for access to credentials | AP News)
(US news outlets reject Pentagon press access policy | Reuters)
(Updated Physical Control Measures for Press/Media Access Within the Pentagon (defense.gov))
国防総省はこれまで、国家安全保障や機密保護義務に反しない範囲で「適時かつ正確な情報を議会、報道機関に提供すること」を政策としてきた。
各部門には広報部門が設置され、報道対応や情報発信を担当してきた。
報道機関に対しては、機密情報(Classified)やそれに準じる情報(Controlled unclassified information=機密ではないが漏洩や不正利用を防ぐために管理が必要な情報)を公開しないという義務や、公開を制限する法令・規則も存在している。
だが、今回のように、機密情報ではないものまで公開禁止にしたり報道前承認を義務化したりするといったルール強化は運営上、大きな変化だった。