今夏の第107回全国高校野球選手権大会では、西東京代表の日大三高が活躍。決勝で沖縄尚学に敗れたものの見事準優勝に輝いた。写真は準決勝の県岐阜商戦で、延長タイブレークの10回表、櫻井選手がタイムリーを打ったシーン(写真:共同通信社)
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「連合チーム」「公立高校」と、高校野球を巡る状況を紹介してきたが、今回は「大学付属高校の増加」について取り上げたい。

系列大学へのルートの存在が付属校の強み

 春夏通じて、甲子園で最多の勝利数を誇るのは、春58勝(優勝4回)夏79勝(優勝7回)計137勝の中京大中京(愛知)、次いで春43勝(優勝1回)夏61勝(優勝3回)計104勝の龍谷大平安(京都)だ。

 中京大中京は、1923年、中京商業として創立され、戦前から夏3連覇や夏春連覇を記録するなど屈指の強豪高校だった。1967年に中京高校と改称するが、1995年、同じ学校法人梅村学園が運営する中京大学附属中京高校となった。

 龍谷大平安は明治期に西本願寺系寺院の子弟教育のために設立された第三仏教中学を前身とし1910年に平安中学となる。1927年夏の甲子園に初出場し、1938年に優勝するなどこちらも戦前からの強豪校だったが、2008年、同じ西本願寺系の学校法人龍谷大学の付属校になり、2015年には経営統合して、龍谷大学が運営する高校になっている。

 ともに、もともと関係が深かった大学と連携したり、経営統合したりしていることが分かる。こういう形で、かつての甲子園出場校が大学傘下に入ったり、大学名を冠したりする例は他にもみられる。

・浪商(大阪)→1989年 大阪体育大浪商
・宇治(京都)→1994年 立命館宇治
・北陽(大阪)→2008年 関西大北陽

 私立高校にとって、大学傘下になることは、多くのメリットがある。より大きな学校法人の傘下に入ることで、経営支援が期待できる。また、大学の名前を冠することで、その「ブランド」を活かした生徒募集が可能になる。

 野球部でいえば、大学のグラウンドや練習施設を使うことができたり、大学生、大学指導者の指導を間接的に受けることができるなどもメリットとなる。

 さらに言えば、系列の大学への推薦入学、AO入試での入学などのルートもできるので高校志願者に「大学進学が約束される」とアピールすることもできる。

 ある私学付属高校の指導者は、

「うちの選手はほぼ全員、上の大学に進学が決まっているので、学校の勉強はするけど、受験勉強はしなくていい、その分練習に打ち込める」

 と話す。大学付属高校になるメリットは大きいのだ。