AI法の4つの柱
日本のAI施策の基盤となる「AI法」(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)はことし6月に成立し、一部が先行的に施行されていました。AIに関する政府の総合的な指針「AI基本計画」はまだできておらず、2025年冬に策定される見通しです。
現時点で政府が明らかにしているAI基本計画の骨子によると、日本が目指すのは「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」。AI先進国に比べて日本の出遅れは明らかですが、骨子案は「今こそ反転攻勢の好機」であるととらえ、「AIを軸とした経済社会」を構築するための国家戦略を打ち立てるとしています。
そのうえで、下図のような4つの基本方針を打ち出しました。
表:フロントラインプレス作成
さらに基本計画の骨子では、「国産AI」の開発を進める方針も打ち出しました。その際は、医療・ヘルスケア、介護、金融、教育、防災、環境保全、農林水産業、食品産業、インフラ建設・管理、造船・舶用工業などの分野に力を入れ、開発・実証・導入促進を進めるとしています。
いずれも、AIを軸とした社会を築き、日本の経済発展につなげる狙いです。さらに、行政機関や主要企業が使用するAIを海外企業に依存した場合、機密情報などの管理に懸念が生じることから、研究開発は国内で推進するとうたいあげました。
一方、日本のAI法には他にも大きな特徴があります。
AI先進国との差を縮めることに主眼を置いたため、厳しい規制によって研究開発を妨げることがないよう、罰則規定を見送ったことです。法案の国会審議では、リスクに十分対処できるのかといった不安や、被害の防止拡大に向けた罰則の導入などを求める声も続出。とくに他の法律で明確な規定がない「ディープフェイク」(AIが作成した偽の動画や画像)にどう対処するかが焦点になりましたが、同法の付帯決議で将来的な取り締まりの強化が示されるにとどまっています。