ボード3.0——“議事の質”を上げる次の型

 独立取締役を増やす「ボード2.0」を超え、投資家サイドの事業・財務に精通したプロを組み込む“ボード3.0”という構想が国際的に議論されている。Gilson & Gordonの提案は、PE型の実装知を上場企業に移植する発想だ。

 日本でもMETI(経済産業省)のCGSガイドライン改訂が、投資家関係者を社外取締役として選任する際の視点を整理し、ボードの役割・機能を「監督の意義」「サクセッション」「報酬」まで立体的に定義し直した。

 ただし、投資家サイドの投資の時間軸と企業経営の時間軸の問題など、まだまだ議論すべき論点は多いが、多様な人材が企業経営に関与し、企業価値向上へ取り組むことを加速させることはより一層進めるべきことだ。

本書を「道具」にする——経営側の処方箋

 中長期の目指す方向性、それに基づく戦略とキャピタルアロケーションについて明確な方向性を打ち出す。 成長投資・再編・人材DX・余剰資本の帰着を数字と言葉で説明する。

 東証の要請は“PBR>1”の儀式ではない。資本コストと株価を意識した経営を回せという宣言だ。

 そのためにも、投下資本に対するリターンを意識する。ROIC導入や、遊休資産・政策保有株の合理性、持分法投資の回収可能性まで含めて棚卸す。

 “同意なき提案”の平時シナリオを持つ。 自社が最も価値を伸ばせる“ベストオーナー”であるかを常々検証し、買付条件(価格・下限・支配構造)に対する方針を事前に決めておく。

 広義の意味で言えば、人的資本に対する適切なリターンを生み出せているかもチェックポイントだ。人員計画・スキルの可視化・AI活用なども含めた労働生産性の向上を、財務指標と対になる“広義の資本効率“として開示する。