度重なる利下げ要求に加えて、FRB本部ビルの改修工事を巡ってもトランプ大統領はパウエル議長を攻撃している(提供:Daniel Torok/White House/ZUMA Press/アフロ)
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(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)

ミラン委員長の理事就任はどこまで材料になるか?

 夏季休暇も重なり材料が枯渇しやすい時期に入ってきているが、米連邦準備理事会(FRB)の人事と、これに伴う政策運営への思惑がにわかに注目を集めつつある。

 既報の通り、8月8日に退任するFRBのアドリアナ・クグラー理事の後任として、一時的に大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長が就くと報じられている。

 クグラー理事が前任のブレイナード理事から引き継いでいた期間に限定した一時的な就任とされ、2026年1月末までの限定的な措置とされる。

 今後、ミラン氏は9月に再開される米上院の承認手続きを経て理事に就任することになるが、銀行委員会における公聴会や本会議の採決などが9月16~17日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)に間に合うかどうかは微妙な情勢と言える。確実なデビュー戦は10月28~29日のFOMCになりそうだ。

 もっとも、今報道されているほど大きな材料になるかは疑問もある。

 第二次トランプ政権発足前後からミラン氏はドル安志向の理論的支柱として知られてきた。同氏が利下げを支持すること自体はサプライズではなく、公聴会時点で「利下げを支持するミラン理事」という材料は消化されるのではないか。

 しいて言えば、年内3回、年明け1回、計4回のFOMCしか出席しないミラン氏は言動の一貫性を保ちやすい(経済・金融情勢に応じて判断を変える必要性が小さい)ため、▲25bpではなく▲50bpを強弁し続けるなどのリスクはあるかもしれない。

 それはトランプ色に染まった次期FRB体制へのイメージ作りにもなり、米金利低下とドル安が一時的に加速する誘因になるだろう。

 とはいえ、後述するように、FRB人事への思惑が相場を主導する時間帯はあくまで短期的だろう。