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2025年7月の参院選では参政党の支持が拡大するなど、新たな「保守」勢力の台頭に注目が集まっています。「日本人ファースト」や「教育勅語の復活」といった主張が聞かれるなか、そもそも日本における「保守」とはなんでしょうか。ドイツ出身で長年日本に暮らしてきた著述家のマライ・メントライン氏が、『「あの戦争」は何だったのか』 (講談社現代新書)を上梓した評論家で近現代史研究者の辻田真佐憲氏に話を聞きました。4回に分けてお届けします。

【Part1】「あの戦争」と「日本人ファースト」、ドイツとの比較で考える「日本の保守」とは

※JBpressのYouTube番組「マライ・メントラインの世界はどうなる」での対談内容を書き起こしたものです。詳細はYouTubeでご覧ください(収録日:2025年7月24日)

啓蒙主義の懐疑から生まれた「保守」

マライ・メントライン氏(以下:敬称略):日本の保守思想は、歴史的にどう整理できますか。

辻田真佐憲氏(以下:敬称略):日本の保守思想もヨーロッパの影響を受けています。「人は学べば賢くなり、社会は理性によって良くなる」というような啓蒙主義がフランス革命などの原動力になりました。一方で、人間は妬みや怒りなどによって突き動かされて愚かな行動もとってしまう。こうした啓蒙主義に対する懐疑が保守主義のベースにあります。

 その上で、人間は愚かだけれども、その愚かさとうまく折り合いをつけてきた知恵が伝統や文化の中にあると考え、尊重するのが本来の「保守」の姿勢です。そうした意味で、今の日本の一部の政治家が唱える「外国人排除」や「教育勅語の復活」というような主張は、本来の保守とは異なる極端な考え方と言えるでしょう。

マライ:ドイツ人は自らの国を「詩人と思想家の国」と呼びますが、日本の保守は日本をどう定義してきたのでしょうか。

辻田:一言で表現するのは難しいですが、戦前には「国体(こくたい)」という考え方がありました。「万世一系(天皇家の血統が変わらず続くこと)」の天皇のもとに臣民がいるというものです。中国などでは王朝は交代するのが当たり前でしたが、日本は初代の神武天皇以来、万世一系だという主張です。

 ただ現代においては、かつてのような主張には説得力がありません。戦後においては、日本は文化的な多様性を取り入れ、東洋と西洋の文化を融合した「橋渡しの国」として再定義するような動きも見られます。

マライ:昨今、「教育勅語」を復活させたいという議論も出てきています。