中年女性が男に文句をいうと、「くそばばあ、はよ死ねよ、ひとりごとや」。

 この男が小賢しいのは、最後に「ひとりごとや」とつけることで、だれにも暴言は吐いてませんよ、ひとりごとですよ、という言い訳を考えてることだ。

女性「いま殴ろうとしましたね」。
男「殴ってませーーん、気色わるっ、終わってるなこの人、すべてひとりごとですよ、ばかな女やな、ひとりごと」。

 ホント腹立つなあ、このくそオヤジ。

 男が調子づく。「警察呼べ、呼べ呼べ、逮捕状でも請求せえ、何度でも逮捕されたろ」

 そこへスクーターに乗った警官が駆け付ける。助かった、と住民は期待するだろう。ところがこの警官、はなからやる気がない。

 男も、警察は民事不介入ということを知っているのだろう、舐めている。

 警官がいう。案の定、いうに事欠いて「通してもらっていいですか」。

男「役職はなんですか? 何のために来た?」
警官「危ない危ない。撮らないでもらっていいですか」

 なにが、通してくれ、撮らないでくれ、だろうか。

 とんちんかんにも程があるが、まあ無理もないか。

 こんな場合、警官にできることはほとんどなにもないのだから。

 テレビ記者が男の言い分を訊く。

 どんな非常識な人間でも、自分の正しさを主張したがるものだ。

 自分が騒ぐようになったきっかけは、近所の交通マナーの悪さだという。

 そこで警察に取り締まりを依頼したが、無反応。それで警察に「注意喚起」をするため、住民への迷惑行為をわざとやったというのだ。「わかるか?」

 わかるわけがない。記者が、「だったら自分で警察に行けばいいじゃないですか」というと、「なんでいかなあかんねん」。

 これだもん。話がかみ合うわけがない。

 男がつい本音をもらす。「近隣でも一緒や、挨拶もしないや、会釈もしない」

 記者が「これからはやりませんね」と言質を取ろうとする。

 記者との問答がめんどくさくなったのか、男は逃げ腰で、早々に切り上げたがる。

男「やれへんというとるやろ、しつこいな」
記者「やらないですね?」
男「やらないというたら、やらないやろ、もうやりませんて、しつこいな、男というか俺という人間が、1回やらんというたらやらんやろ」