家の所有者が地裁に訴えるも

 住民たちは、社会福祉士、弁護士、大阪府議会議員らと解決策を話してきた。だがネックは男の「人権」にかかわることで、いい解決策が見つからない。

 そうした中、男が住んでいる家の所有者である男の親族が、大阪地裁に、男に家から出ていくよう求める裁判を起こした。

 住民たちも併せて被害を訴える書面を提出した。

 そして2月に判決が出た。

「原告の請求棄却」、すなわち「男が家から出る必要はない」。

 まあ驚いた。判決理由はこうである。

「家の所有者である親族はこれまでに男性を家から追い出そうとしたことはなく、男性が家に住むことを暗に認めていた。たしかに近所トラブルはあったが、それは男性と住民とのトラブルにすぎず、男性が家から出る理由にはならない」

 現実への理解も共感もない、世間知らずの裁判官の理屈である。

 この判決の翌日、また男の暴言が始まった。

高裁で逆転判決

 しかしそれから4カ月後の6月、やっと正義が下されたのである。

 大阪高裁は、男の住居が「迷惑行為を行うための拠点になっている」として、親族の訴えを認める判決を言い渡したのである。

 そして7月24日、裁判所の執行官による強制執行。委託業者が音響装置など、家財を運びだしたのである。

 8年間、悩まされつづけていた近所の住民は「長かったです。本当に長すぎました。普通に安心して暮らしていければそれだけで満足です」と語る。