米ニューヨークの5番街にあるアップルストアで最新のiPhoneを手に取る顧客(5月23日、写真:ロイター/アフロ)
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 先月31日に発表された米IT大手、アップルとアマゾン・ドット・コムの4~6月期決算は、両社そろって市場予想を上回る増収増益となった。

 しかし、その内容を詳しく見ると評価は単純ではない。

 アップルは関税前の駆け込み需要という一時的な要因に支えられた側面が強く、AI戦略の遅れも指摘される。

 一方、アマゾンは収益の柱であるクラウド事業の成長率が競合に見劣りし、株価が下落した。

 一見好調な決算は、両社がそれぞれ直面する構造的な課題を改めて浮き彫りにしたようだ。

iPhone駆け込み需要で増収増益、AI・訴訟に課題も

 アップルの2025会計年度第3四半期(4~6月期)決算は、売上高が前年同期比10%増の940億3600万ドル(約14兆1700億円)だった。増収率は2022年1~3月期以降で最大となり、5四半期連続の増収を達成した。

 純利益は9%増の234億3400万ドル(約3兆5300億円)で、3四半期連続の増益。1株利益は1.57ドル(前年同期は1.40ドル)で、売上高や純利益とともに市場予想を上回った。

 好調な業績は、スマートフォン「iPhone」の2桁増収が牽引した。特に米国で、関税による値上げを懸念した「駆け込み需要」が大きく寄与した。

 ティム・クックCEO(最高経営責任者)は、関税が業績に与える影響について言及。4~6月期に中国からの輸入品に対する関税コストとして8億ドルを計上したと明かした。

 さらに7~9月期にはこのコストが11億ドルに増加するとの見通しを示しており、今後も関税が収益を圧迫する要因となることを示唆した。

iPhone、過去3年半で最大の増収率

 全体の約5割を占めるiPhoneの売上高は、前年同期比13%増の445億8200万ドル。2021年10~12月期以降で最大の増収率を達成した。

 この好調な販売実績について、アップルのケバン・パレクCFO(最高財務責任者)は、iPhoneの売上増の約6分の1が関税導入前の駆け込み需要によるものだと述べた。消費者が価格上昇を懸念し、購入を前倒しした。

 アップルは関税の影響を緩和するため、米国向けのiPhone生産をインドにシフトするなどの対策を進めている。

 しかし、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、そのインドからの輸入品に対しても新たな関税が課される可能性が浮上しており、生産地の多様化だけでは解決できない新たなリスクも懸念される。