Grokのロゴ(2月16日、写真:ロイター/アフロ)
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 米起業家イーロン・マスク氏が率いるAI新興企業、米xAI(エックスエーアイ)が今月10日に公開した最新の対話型AI「Grok(グロック)4」が、物議を醸す質問に対し、マスク氏個人の見解を検索・参照して回答を生成する挙動が明らかになった。

 AIの公平性や中立性を巡り専門家から深刻な懸念の声が上がっている。

 マスク氏は既存AIの偏向を批判し、「最大限に真実を追求する」AIを目指すとしていたが、創業者の思想を反映する仕様は、新たなバイアス(偏り)を生むとの指摘が出ている。

思考プロセスが「忖度」を露呈

 xAIがGrok 4を公開すると、直後から米メディアやユーザーの間で、その特異な挙動が次々と報告された。

 米経済ニュース局CNBCの検証によると、「イスラエルとパレスチナの紛争でどちらを支持するか」といった対立を生みやすい質問を投げかけると、Grok 4は回答を生成する過程で、X(旧ツイッター)などからマスク氏の過去の発言やスタンスを検索していた。

 実際に、ニューヨーク市長選に関する質問では、共和党候補を支持する回答を提示し、その理由として「マスク氏が頻繁に提起する懸念と一致する」と、創業者との関連に直接言及した。

 この挙動は、AIが結論に至るまでの思考プロセスを可視化する「リーズニングAIインターフェース」によって明らかになった。

 旧版のGrok 3が同様の質問に中立的な回答をしていたのとは対照的で、新モデルに特定のバイアスが意図的に組み込まれた可能性を示唆している。

「左派的偏向」修正の狙いが裏目に

 この仕様の背景には、マスク氏の強い問題意識がある。

 同氏は以前から、競合のAIが「左派的」に偏向していると批判。6月には、Grokが「左派の教化によって操作されている」とのユーザーの指摘に同意し、「修正に取り組んでいる」と公言していた。

 今回のGrok 4の挙動は、その「修正」の結果、創業者の見解を一種の“正解”として参照する設計に至ったものとみられる。