事故現場で行われた再検証の様子(遺族提供)
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宇都宮市の一般道を車で走行中、友人のバイクと競り合いながら時速160キロを超える高速度で前車に追突。この事故でスクーターの男性を死亡させ「危険運転致死罪」で起訴されている被告の男(22)が、保釈中の今年5月、バイクを無免許で運転し、追起訴されていたことが分かった。事故発生から2年半、刑事裁判は中断したままで、次回公判期日も決まらぬ中、遺族の怒りと疲労はピークに達している。一瞬にして何の落ち度もない夫の命を奪われた妻が、本件の取材を当初から続けているノンフィクション作家の柳原三佳氏に今の思いを語った。

検察から思いがけない知らせ

「7月29日の夕方、宇都宮地検の副検事から電話があり、保釈中の加害者・石田颯太(22)が、2カ月以上前に、無免許運転で捕まっていたことを知りました。それを聞いたときはとにかく驚き、被害者や遺族をバカにしているのかと、怒りを抑えきれませんでした」

 そう語るのは、この事故で夫の佐々木一匡さん(63)を亡くした、妻の多恵子さんです。

「石田被告は、5月9日の夕方、宇都宮市内で知人から譲り受けた中型バイクに乗っているところ、宇都宮中央署の警察官から職務質問を受け、無免許運転が発覚したそうです。

 警察は当初、彼が2年前の死亡事件で世間を騒がせている被告人だということに気づかず、そのまま帰してしまったそうで、結局、2カ月以上たった7月25日、宇都宮地検は道路交通法違反(無免許運転)の罪で石田被告を追起訴しました。今回のことで、彼は私の主人に対してやった行為に対して何の反省もないことがはっきりしました。

 無免許運転が発覚したのはたまたまで、そのまま埋もれていた可能性もあったでしょう。本当に悔しいです、そして、虚しいです……」