特殊詐欺に引っかかりかけたSさんだが、サイバーパトロールに救われた(写真:KeyRabbits/イメージマート)※写真はイメージです
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 警察庁によると、警察官を装って電話をかける特殊詐欺が横行している。都内に住む保険会社で事故担当として働くSさん(女性、43)は、そうした犯罪に巻き込まれた1人だ。3時間あまりも電話を通して犯罪者と話したという彼女は、どんなやり取りをしたのか。本人に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──Sさんがどんな事件に巻き込まれたのか、教えてください。

Sさん(以下、S):事件があったのは7月9日のお昼の12時頃です。大阪府警察署の警察官を名乗る男性からスマホに電話がかかってきました。

「あなたの銀行のキャッシュカードが、マネーロンダリングに使われている可能性がある」「犯罪組織のメンバーの自宅からあなたの銀行口座の情報が発見された」「今すぐ大阪府警察署に来てください」と言われました。

 私が住んでいるのは東京ですし、その日は午後から会社に出勤する予定でした。事情を説明すると相手は、「では、ビデオ電話で顔を見る形で話ができれば、このまま事情聴取することを特別に許可します」「それができないのなら、大阪府警に来てもらうしかない」「出頭してください」と言われました。

 思わず「出頭ですか」と質問すると、「あなたのカードがマネーロンダリングに使われていて、あなたには共犯の疑いがある」と言われました。事件名は「イトウシンヤ資金洗浄事件」、事件番号は「ワ006818」で、事情聴取を受けないと逮捕されると言われました。

──マネーロンダリングに使われているというキャッシュカードは紛失していたのですか?

S:この口座は投資用に作ったもので、ほとんどオンラインでやり取りするだけの銀行口座でしたので、カードは発行していませんでした。疑問に思った私が、警察官にそもそもキャッシュカードがないと伝えると、「勝手にカードを作られたのではないか」と言われました。

──相手はSさんの口座番号を持っていたのですか?

S:分かりません。カードを作っていないから、手元にカードはないし、口座番号も記憶していません。もちろん調べれば分かりますが、唐突にいろいろ言われたので、実際の番号と照合しようとも考えず、そのまま相手の話にのみ込まれてしまいました。

 大阪府警の担当刑事から詳しい説明があるので、電話があったら出て、先の事件番号や事件名を言うように言われました。最初に電話をかけてきた男性は30代ぐらいの印象で、話し方も相当練習しているのか、かなり警察っぽかったです。この人の名前は分かりませんでした。

 1人目の警察官との電話を切ると、すぐに2人目のこの事件の担当刑事を名乗る男性から電話がかかってきました。この人は20代後半ぐらいの声で、北山悟と名乗りました。この人とは2時間ぐらい話しました。