お金を払えば、誰でもロボットに宣伝してもらえる時代に?(筆者がWhiskで生成)
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(小林 啓倫:経営コンサルタント)

検索エンジンは時代遅れ?

 広大なネットの中から必要な情報を探し出す場合、皆さんなら何を使うだろうか?これまでなら、その答えは「検索エンジン」一択だっただろう。しかしいま、「生成AI」がそのライバルとして急速に台頭しつつある。つまり生成AIに質問すれば、AIがその答えをウェブ上から探してくれるというわけだ。

 そして、かつてのSEO(検索エンジン最適化)のように、AIから出力される回答に自社の情報が表示させるよう、さまざまなテクニックを駆使するという動きが生まれている。それらは「AIO(AI最適化)」や「GAIO(生成AI最適化)」、あるいは「AIAO(AIエージェント最適化)」などと呼ばれており、何度かこの連載でも取り上げてきた。

 たとえば、お馴染みのGoogleは2024年から、検索結果表示画面のトップに、生成AIによる回答文(さまざまなウェブサイトから得られた情報を要約したもの)を表示するようになっている。

 これは「SGE(Search Generative Experience)」、現在は「AIオーバービュー(AI Overview)」と呼ばれており、ユーザーは複数のウェブページを訪問することなく、検索結果画面から直接、質問に対する包括的な回答を得ることができるようになった。

 もっとも、ウェブサイトの運営者の側から見れば、AIオーバービューがあることで、本来は自分たちのウェブサイトに訪問するはずだった人々が消えてしまうことになる。実際、この懸念が現実のものになっていることが、さまざまなデータから明らかになっている。

 たとえば、ブルームバーグ誌は、独立系のウェブサイト運営者やコンテンツ制作企業25社にインタビューし、彼らのサイトに対するGoogleからのトラフィックが低下していることが確認されたと報じている

 あるサイトなどは、AIオーバービュー開始後、実に70%以上もトラフィックが減少したそうだ。

 もちろん、これまでもGoogleの検索アルゴリズム変更により、トラフィックに影響が出ることはあった。ところが、従来はアルゴリズム変更に対応できていたものが、今回のAIオーバービューでは、いまのところトラフィックを回復できていないという。

 それでも、AIオーバービューを含む多くの生成AI系サービスでは、外部サイトを参照して回答を生成した場合、参照元のサイトの名前とリンクを表示するという対応をとっている。そのため、全員が常にというわけではないが、生成AIの出力結果が正しかったかどうかを確認するために、そうした参照先のサイトを訪れる人も多い。

 また買い物などのケースでは、生成AIが出力した情報を参考にしつつ、ECサイトに移動してそこで実際に買い物をすることになる。したがって、生成AIの回答に自社の情報を含めてもらえるよう策を講じることは、SEOの効果の減少を少しでも補うことになる。

 その結果、「AI最適化」すなわちAIOに注目が集まっているわけだ。では実際に、AIOはどこまで効果があるのだろうか。中国の例を見てみよう。