
(小林 啓倫:経営コンサルタント)
「2025年はAIエージェントの時代になる」。今年の初めにささやかれたそんな予言が、次第に現実のものになろうとしている。生成AIをさらに進化させ、機械が自律的に活動することを可能にしたアプリケーション「AIエージェント」を主要なAI企業がこぞって発表しているのは、その象徴だ。
たとえば、OpenAIのライバルであるAnthropicは、同社初の開発者向けイベントの中で、最大7時間連続で稼働するAIをリリースした。
またMicrosoftも、自社イベントにおいてさまざまな関連技術を発表するとともに、「Open Agentic Web(オープンなエージェント型ウェブ)」というコンセプトを打ち出し、これからは人間だけでなく、AIエージェントもウェブ上で活動するようになるという未来像を描いている。
◎マイクロソフトが打ち出した「オープン・エージェンティック・ウェブ」に潜むAIエージェントの深刻なリスク(JBpress)
確かにAIエージェントが人間に代わってさまざまなタスクを実行してくれるというのは、私たちにとって歓迎すべき状況だろう。ただ、そんな未来が人間にとって悪夢にならないよう、十分な警戒が必要なようだ。
AIエージェントがもたらす経済革命
「そんな大げさな」と思われたかもしれないが、AIエージェントが単にウェブ上での活動だけでなく、経済や社会全体にまで影響を及ぼし得ることは、多くの識者が指摘している。
たとえば、Microsoftのリサーチ部門であるMicrosoft Researchは、AIエージェントが経済にもたらす変革について、その名も「The Agentic Economy(エージェント型経済)」というタイトルの論文にまとめている。
それによると、AIエージェントの普及によって、消費者と企業との間に存在する「コミュニケーション摩擦」を劇的に削減する可能性があるという。