テレビ東京系ドラマ『夫よ、死んでくれないか』公式ホームページより
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(小林偉:放送作家・大学教授)

“女尊男卑”化するテレビ番組

 大学で教鞭を執らせていただいている筆者ですが、先日のゼミ授業中にある女子学生からこんな意見が出されました。

「最近のテレビって“女尊男卑”化しているように感じるんですけど・・・」

 曰く、大人数の女性タレントたちが男性の様々な言動をディスるような番組が多くて気になる・・・と。

 確かに、バラエティ番組ですと、『トークィーンズ』(フジテレビ系)や『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系)などなど、上記のような内容の番組が近年増加しているように感じます。今の大学生は幼い頃からジェンダーバランスや多様性ということを叩き込まれている世代ですから、こうした点に特に敏感なんでしょうね。

 そこで放送作家でもある筆者は、コレが逆の構図だったら企画自体が通らないなとも感じた次第。要するに、大人数の男性タレントが女性の言動を云々する図式は成り立たないだろうなと。

 またテレビドラマに於いても、イケメンだらけの高校に女性が男性と偽って入学するという『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス』(フジテレビ系にて2007年と2011年の二度にわたってドラマ化)や、イケメン率が異常に高い高校が舞台の『もしも、イケメンだけの高校があったら』(テレビ朝日系/2022年)のような作品はOKでも、逆の構図=美人や可愛い女の子だけの高校、という企画は絶対通らないだろうと。

 さらに朝ドラでは2010年頃からヒロインを取り巻く男優陣に複数のイケメンを配する“イケメン複数制”(筆者命名)が導入(?)されていますが、これまた逆の構図=男性主人公の周りに複数の美人という、半ばハーレム化(笑)した朝ドラは成り立たないだろうと思います。

 さらにさらに、最近のドラマのトレンドとなっている“復讐モノ”ですが、これも復讐するのは女性で、復讐されるのは男性という構図がほとんど。例えば今年4月からテレビ東京系で放送されていた『夫よ、死んでくれないか』のタイトルを夫⇒妻に置き換えたら、企画が通ることもなかったでしょう。

 以前、とある脚本家の方とお話をした際、刑事ドラマなどで犯人を女性とする場合、プロデューサーなどから「女性に据えた理由は何か」をかなりしつこく問い質されると仰っていました。犯人が男性の場合はスルーするのにと。

 ・・・というようにテレビの世界では、ウチの女子学生が感じ取った、女性に配慮するという姿勢が顕著であることは、一理も二理もあるんですよね。

 では、それは何故なのか。