次の世代に託した「絆」

 最後に、キズナが次の世代に託した「絆」についてご紹介しましょう。去る6月11日、南関東公営競馬3歳クラシック三冠の第2弾「東京ダービー」が大井競馬場で開催され、優勝したのはナチュラルライズ、2022年に生まれた牡馬で、父はキズナでした。この秋には3歳ダート3冠をめざします。

 昨年(2024年)の東京ダービーを制したのはラムジェット(父・マジェスティックウォリアー)で、生産牧場、馬主、調教師はキズナと同じトリオでした(厳密にいえば、馬主は前田晋二の兄・幸治)。

 また、わずか4戦の戦績で惜しまれつつ昨年引退した皐月賞馬・ジャスティンミラノもキズナの子で、昨年のダービー(2着)で、もし勝っていたらディープインパクト~キズナ~ジャスティンミラノと父系3代続けてのダービー馬誕生となっていました。

 ほかにも2022年、23年の「安田記念(G1)」を連覇したソングラインなどキズナの血は脈々と受け継がれていて、2021年のエリザベス女王杯(G1)で勝利した、10番人気だったアカイイトもキズナの子でした。

 競走馬の命名は馬主の冠名や父馬の一部を使用したり、外国語をカタカナにするケースが多いのですが、アカイイトはすぐにおわかりのように「絆」から連想された「赤い糸」で、こうした命名も父娘のつながりを感じさせるものです。

 血統・人気・能力・実績にかかわらず、競走馬に授けられた命名の背景やその意味合いを知ることも競馬の楽しみの一つでしょう。

(編集協力:春燈社 小西眞由美)