政府効率化省(DOGE)における職員の大量解雇では、マスク氏は強い批判を浴びた(写真:ロイター/アフロ)
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 新党「アメリカ党」の立ち上げを宣言して、米トランプ政権との対立姿勢をますます鮮明にする実業家のイーロン・マスク氏だが、ツイッター買収以降、やることなすこと賛否両論でどこか危なっかしい。

 ツイッター買収から彼はどう変わったのか。なぜ「X」はあれほど強烈な言論空間になってしまったのか。『Breaking Twitter イーロン・マスク 史上最悪の企業買収』(日本語版 ダイヤモンド社)を上梓した、小説家でノンフィクション作家のベン・メズリック氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

現代のレオナルド・ダ・ヴィンチだと思ったのに……

──2022年4月、イーロン・マスク氏が旧ツイッターを440億ドル(およそ6.5兆円)で買収しました。複数の内部のキーパーソンに綿密に取材をされ、本書では買収の舞台裏について書かれています。

ベン・メズリック氏(以下、メズリック):私はイーロン・マスクのファンでした。彼は世界で最も賢い人間の一人だと考えた私は、宇宙事業や電気自動車を成功させる彼を、現代のレオナルド・ダ・ヴィンチのような存在だと思っていました。

 ところが、彼がツイッターを買収すると、暴走のスパイラルが始まったという印象に変わりました。私がこの本を書いた理由は、イーロンのファンとして何が起きているか、ツイッターの改革がなぜあんなことになったのか知りたかったからです。

 ハリウッドのあるプロデューサーのメールからこの本の制作は始まりました。書いてきたものが映画化されてきたので、私はハリウッドの人たちとやり取りがあります。

 イーロンがツイッターを買収すると、「この話は素晴らしい映画かTV番組になる」「もし興味があるなら参加しませんか」と彼は私に勧めました。私は彼を通して、彼がやり取りしていたツイッター内部の人々と知り合いました。イーロンによるツイッター改革の過程でクビを切られた人々です。

 やがてイーロンの側近たちにも接触するようになり、最終的にはイーロン本人にも取材を申し込みました。彼は断りましたが、彼の仲間たちの中には取材を受けてくれる人もいました。イーロンと長いこと仕事をしてきた側近たちです。

──マスク氏のさまざまな言動、周囲の方々とのやり取りや軋轢について数多く記述があります。イーロン・マスクとはどんな人物だと思われますか?

メズリック:答えるのが難しい質問ですね。彼の中には複数の異なる顔があります。