世界からの退却は夢物語

 米国はあまりにも多くの場所にあまりにも長い間、あまりにも多くの権益や資産を築いてきたことから、簡単にはこれらを切り離せなくなっている。

 米国の孤立主義者とは、米国がそうした「重荷」を最初から手に入れなければよかったと思っている人のことだ。

 事実があった数十年後に積極的に荷を下ろしたいと思うこととは、全く別の話だ。

 大統領5年目のトランプが、世界のあちらこちらにある米国の足跡を消す仕事について、一部のファンの期待にはほど遠い実績しか上げていないのはそのためだ。

 物事の変わりにくさを過小評価するのはジャーナリズムの悪い癖だ。

 オバマの名高い「アジアへのピボット」から14年経ち、シェールオイルのおかげで米国は長らく続けた中東への関与から解放されたと考えられた時から数えるならそれ以上の年月がすでに流れているのに、ホワイトハウスはイランの体制転換を半ば真剣に考えている。

 トランプは5月、大統領2期目の初の外遊先にペルシャ湾岸諸国を選んだ。1期目もそうだった。

 米国がいまだにカタールに資産(基地)を置いており、それがイランの標的になっていることについては、改めて説明するまでもない。

 もし米国が1つの地域からでさえ手を引けないのであれば、もっと広い世界からの退却など夢物語にすぎないように思える。