(3)極超音速および弾道ミサイル追跡宇宙センサー

 極超音速弾道追跡宇宙センサー(HBTSS=Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor)は、ミサイル防衛局(MDA)が滑空段階迎撃ミサイル(GPI:Glide Phase Interceptor)と共同で開発している衛星ベースのセンサーシステムであり、極超音速滑空弾(HGV) の脅威に対処するためのものである。

 HBTSSは、最終的に宇宙開発局(SDA)が開発しているより広範な衛星群であるPWSAに統合される予定である。

 すなわち、宇宙開発庁(SDA)が開発するPWSAのトラッキングレイヤー衛星と低高度軌道でネットワークを構成し、「宇宙配備赤外線システム」(SBIRS)衛星や「次世代静止軌道衛星」(OPIR:Overhead Persistent Infrared)からキューイングを受けて極超音速兵器を追随し、そのデータを滑空段階迎撃ミサイル(GPI)やイージスシステム、「終末高高度地域防衛ミサイル」(THAAD)に送信するとされる。

 HBTSSのイメージは下図4を参照されたい。

図4:HBTSSのイメージ図

出典:ノースロップ・グラマンHP

 2024年2月、国防総省(DOD)は、HBTSSのプロトタイプ2機を含む6機の衛星の打ち上げと軌道投入に成功したと発表した。

 2025年4月25日、ミサイル防衛局(MDA)は、L3ハリス社のHBTSS衛星の試作機が試験で性能目標を達成したと発表した。

 MDAの広報担当者によると、同局は2024年2月にL3ハリス社製とノースロップ・グラマン社製の2機の競合するHBTSS実証衛星を打ち上げたが、プログラム要件を満たしたのはL3ハリス社の衛星のみだった。

 HBTSSは、大統領令によって正式化されたミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム・プログラム」の基盤技術とみなされている。

 大統領令は、ミサイルおよび航空脅威から米国を守るためのより広範な戦略の一環として、「HBTSSの導入の加速」を求めている。