東アジアの安全保障は日本任せ?
李大統領が日韓関係を重視する方針をとっているのは、国際情勢が国内経済に直結していると考えているからだ。そのなかでとりわけ重要なものと位置付けられているのが、安全保障である。24日には李大統領は「安保が今や経済問題と深く直結」しており、「安保こそが経済」と述べ、安保の確保こそが経済の安定につながるという認識を示した。
とはいえ、韓国経済は貿易相手国のトップ1、2位を占める中国・アメリカとの間で板挟みにあってきた。したがって、李大統領にとって、米中両国の間でバランスを取りながら国内経済を立て直していく必要がある。ただ、そのなかで特に重要なのが、アメリカである。
韓国企業の海外進出先で最も多かった国は2000年代初頭には中国だったが、その後、アメリカにシフトし、2010年代を通して逆転し現在に至っている。したがって、李政権にとって国内経済の立て直しでアメリカが重要なのは当然なのだが、そこでカギとなるのが日本との関係である。
というのは、アメリカのトランプ政権は不確実性が高すぎるからだ。現在問題になっている高関税措置もそうだが、同盟国に対してもシビアな対応を躊躇(ちゅうちょ)しない。そうした中、アメリカの同盟国である日本との関係が険悪になれば、日米韓の安全保障体制に亀裂が入りかねない。それを理由に、トランプ大統領が韓国に厳しい対応をとる可能性もある。
また、李大統領は自国の経済対策に集中するために、日本に東アジアの安全保障で中心的な役割を担わせる素振りも見せている。大統領選を控えた今年2月には「日本の防衛力増強は韓国にとって脅威にならない」と発言している。
東アジアで喫緊の問題とされている台湾有事についても、次期統一相の候補である鄭東泳(チョン・ドンヨン)氏は、「台湾有事は韓国の有事ではない」と述べている。つまり、韓国の安全保障は朝鮮半島の平和の確保に集中しており、それは台湾有事とは関係ないという認識である。