介護離職はしない方がいい
奥村:もちろん、その人が置かれている経済的な状況や、家族に対する気持ちにもよりますが、基本的には仕事は辞めないほうがいいと思います。
私も32歳で介護離職をしましたが、本当に大変です。企業はブランクがなく、若い人材を求めますから、再就職はかなり難航します。現実を知れば知るほど、介護離職は避けるべきだと痛感します。
──働かなければ生きていけないし、自分が介護しなければ親は生きていけない。これを1人の人間に背負わせようというのは、本当に酷ですね。
奥村:日本では「8日に1件」、介護疲れによる無理心中や殺人事件が起きているとされています。介護の問題の本質は、行政による支援が手薄になっていることでしょう。
介護従事者は安い賃金で、劣悪な労働環境の中働かされています。人手不足も深刻ですし、このままでは介護産業そのものが成り立ちません。現実に、1人のケアマネージャー(介護支援専門員)が40〜50人を担当し、特養の従業員は夜勤の際1人で70人見ている、というような状況になっています。
一方で、家族が身内の面倒を見る、というモデルはもう持続可能ではありません。国をあげて、公的介護を充実させていかなければ、現役世代も高齢者も、共倒れになる未来が待っています。