警戒される「2022年型の円安」

 まず、輸入物価指数は円建て・契約通貨建ての双方で押し上げられる。現状では前年比マイナスが定着しているところで、これが日銀の利上げ意欲を抑制する一因にもなっていたが、そうした「利上げしない理由」は1つ頓挫することになる。

 なお、現状では変化率としての鈍化こそ認められるものの、2021年から2022年にかけて急騰した円建て輸入物価指数の水準は下がっているわけではなく高止まりしており、これが実質ベースでの日本経済の成長を抑制しているのは周知の通りである。ここで中東リスクが長引けば、その状況をさらに悪化させることになる。

 なお、中東リスクの残存を前提とした場合、恐らく主要海外中銀は原油価格の騰勢を理由に利下げ路線を棚上げするだろう。とすれば、日銀が利上げを温存すると「相対的に低い円金利の水準」がクローズアップされ、それ自体が円売りを焚きつけそうだ。まさに、2022年のロシア・ウクライナ戦争の開戦を受けて目にした光景である。

 現状はこうした「2022年型の円安」が再現されるのかどうかの瀬戸際にあるように思える。

 3年前の光景を思い返せば、今後の植田総裁による情報発信は極めて重要になる。