米国とイスラエルは核施設への攻撃を繰り返すことができる

 イランの最高指導者アリ・ハメネイ師に「無条件降伏」の最後通牒を突き付けたトランプ氏は6月19日、2週間の期限を与えたが、わずか2日間に短縮された。イランを油断させる策略だったのかどうかは分からないが、核施設の破壊は成功を収めた。

 イランのセイエド・アッバス・アラグチ外相は「国連安全保障理事会常任理事国の米国はイランの平和的核施設への攻撃により国連憲章、国際法、核兵器不拡散条約(NPT)の重大な違反を犯した。イランは主権、利益、国民を守るためにあらゆる選択肢を留保する」と述べた。

 イランの防空能力が弱体化した今、米国とイスラエルは核施設への攻撃を繰り返すことができる。イスラエル諜報特務庁(モサド)はイランの軍首脳、核科学者をいつでも暗殺できる。一方、イランは中東の米軍基地への攻撃、ホルムズ海峡封鎖などの報復措置に出る恐れがある。

6月22日、イスラエルのテルアビブではイランから発射されたミサイルの直撃で大きな被害が出た(写真:AP/アフロ)

 イランは丸裸も同然の状態だ。イスラエルと行動を共にしたトランプ氏のギャンブルが凶と出るか、吉と出るか。ハマスの暴走を黙認したイラン指導部の自業自得とは言え、私たちは今こそサダム・フセインの銅像が引き倒された時の歓喜を思い起こすべきなのかもしれない。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。