米国第一主義と整合しているかどうかが判断基準

 在韓米軍は北朝鮮だけでなく中国の台湾侵攻への対応も求められる。韓国の国防費はGDP比の2.8%。駐留経費増額に加え5%への引き上げ要求に、「中国にも謝謝、台湾にも謝謝」発言でトランプ政権に警戒される韓国の李在明大統領がどう応えるのか注目される。

 ヘグセス氏はオーストラリアに国防費を現在のGDP比1.9~2%から3.5%に増額するよう求めている。ホワイトハウスは「(バイデン政権が推進した)米英豪3カ国の安全保障協定(AUKUS)の枠組みがトランプ大統領の米国第一主義を整合しているか確認したい」と揺さぶりをかける。

2023年3月13日、カリフォルニア州サンディエゴ、ロマ海軍基地で新たなAUKUS提携について会談した米国のバイデン大統領(中央・当時)がオーストラリアのアルバニージー首相(左)、英国のスナク首相(当時。写真:Mark Alfred/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)

 安全保障を貿易交渉の切り札に使うのは賢明ではないが、長年にわたる欧州の安全保障タダ乗りがロシアのウクライナ侵攻を招いた面は否定できない。台湾で同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。本当の戦争に備えなければ戦争を防げない時代を私たちは生きているのだ。

 少子高齢化する日本では老眼鏡が必要な自衛隊員が増えたと揶揄される。GDP比5%の国防費が日本にとって妥当かどうかはさておき、米国の国力低下があらわになる中、台頭する中国の暴走を抑止するには兵員と装備のハードパワー拡充が求められるのは至極当然だろう。

【木村正人(きむら まさと)】
在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。