SFTSに治療薬はあるのか?
万一ペットがSFTSに感染した場合、対症療法が行われるが効果は乏しい。一方で、人については2024年6月にアビガン(一般名ファビピラビル)が承認された。人での感染事例が徐々に増加し、その対策が急務となっている中、治療薬が利用可能となったのは大きい。

玉原氏は、ペットでも治療に使える可能性がある薬だと考えるが、大きな課題は流通の可能性や薬価の高さとなるようだ。
アビガンは人での薬価が1錠約4万円で、1日目には18錠を使い、2日目以降は毎日8錠を服用する。全体で投与期間は10日で、薬価は1日目が72万円、2~9日目が288万円。合計では約360万円になる。かなりの高額だ。
現在はペット向けに流通していないが、仮に使える状況だったとしても、自費診療のペットに使用する上で飼い主の出費は無視できない。ネコやイヌでの用量が人と比べて少ないとはいえ、仮に使用量が10分の1としても30万円を超える。
玉原院長は、「人と動物の健康を共に考える『ワンヘルス』と呼ばれる考え方が重要視されるようになっている。ネコなど動物の感染数が圧倒的である中、アビガンを動物にも使えるシステムができれば、良いデータを取ることができ、ひいては人の健康にもつながると考えられる」と語る。
ペットの薬物治療を広げることで人での感染が阻止できるとすれば、公的な支援の可能性は高まる。
ネコでは、致死率100%とされた猫伝染性腹膜炎(FIP)が、最近では新型コロナの治療で使われたモルヌピラビルという薬が国内で流通し、動物病院で使えるようになったことで、完治させることが可能な病気になったという好例がある。
SFTSの社会的なインパクトを考えれば、治療手段の確保は大きな課題になりそうだ。