SFTSが国内で注目を集めたきっかけ
前述したように、山口大学共同獣医学部が国内で初めてSFTSを報告したのは2013年と、SFTSは比較的歴史の浅い病気といえる。もっとも、当初報告されたのは人での感染だった。
同大学微生物学教室准教授の下田宙氏は、コウモリ、イノシシ、シカなど野生動物の感染症の研究に取り組んでいる。そうした中で、マダニは感染症を媒介する虫として重要な存在だ。
下田氏は2013年のSFTS発見について、「それまでも動物での感染が起きていたと考えられるが、当初、人での感染例があるまで注意が向けられるには至っていなかった。人で確認されたのをきっかけに調査が始まった」と振り返る。

マダニを介した感染症としては、SFTSの他に日本紅斑熱という感染症が存在する。2024年に年間505例と少なくない。また、マダニを介するものではないが、同じようにダニの仲間によって感染するつつが虫病も同年349例が報告されている。SFTSの初期の症状は食欲不振など一般的なもので、他の病気に紛れる形で感染者を出していた可能性がある。
歴史的に見れば、SFTSは中国で2009年に初めて報告されたが、下田氏は「中国から日本に来たのか、日本から中国に行ったのかなど、広がった経緯もいまだに不明で研究途上」と解説する。