「個人の行動変容」が対策のカギに

 地球温暖化の防止に向け個人の行動を変えていくことは、「個人の行動変容」という言葉で表現されている。

 行動変容の意義は、さまざまな調査結果でも示されている。例えば、博報堂の「第6回・生活者の脱炭素意識&アクション調査」(2024年10月実施)によると、「脱炭素」という言葉を知っている人は91.1%に達した。前回2023年調査とほぼ同じ水準で、割合は極めて高い。

 ところが、「日々の暮らしの中で、どの程度『脱炭素社会に向けた行動』をしていますか」の問いに対しては、「非常に意識して行動」と「ある程度意識して行動」を合わせても、33.6%にしかならなかった。行動に踏み出していない理由では、「具体的に何をしたらいいのかわからないから」(30.4%)、「お金がかかりそうだから」(28.5%)が上位だった。

 仮に「脱炭素」の言葉を知っている人すべてが、「具体的に何をすればいいか」「お金をかけずに生活の中で手軽にできることは何か」を知り、実際にアクションを起こせば、「行動もしている」人の割合は一気に跳ね上がる。

 政府の地球温暖化対策計画にも、“伸びしろ”への期待がある。

 ことし2月の閣議決定で改訂された同計画は、温室効果ガス削減を2013年度比で2035年度・60%、2040年度・73%とする目標を掲げた。ただ、よく見ると、「産業」「業務その他」「家庭」「運輸」「エネルギー転換」という5部門の目標値には、高低差がある。最も大きい削減幅を求められたのが、個人の行動変容と直結する「家庭」で、まずは5年後に「2013年度比でマイナス66%」という目標を割り振った。

 一方、2013年度の排出量が4億6300万トンと1位だった「産業」に割り振られた目標は「マイナス38%」。同じ年度に「家庭」は2億800万トンで4位だったことを考えると、政府の計画は産業界に配慮し、家庭に頑張りを押し付けていると見ることもできる。実際、環境NGOなどからは、国民のライフスタイルの変容に過度に期待し過ぎて、政府は有効な目標設定や仕組みづくりを怠っている、という批判が消えていない。

環境省は地球温暖化対策計画について「暮らしの分野でも大幅な削減が求められます」と説明(画像:2025年6月「デコ活の概要」資料より)

 そうした中、政府も行動変容・ライフスタイル転換を後押しする取り組みを続けている。2022年に始まった「デコ活」(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)は、その代表的な取り組みだ。

「デコ活」が示す、脱炭素につながる将来の豊かな暮らしの全体像(出典:環境省)

 ただ、「国民運動」と胸を張って名乗れるほど浸透していない。環境省の調べでは、認知度は25.7%(2024年)。デコ活応援団(官民連携協議会)に参画している岡山県の県内調べでも、19.3%(2025年)。さらに言えば、たとえ認知度が上がったとしても、行動が伴うかはまた別の話でもある。