判決では改造を指示した田中被告の責任が大きいと指摘されました。不正改造(道路運送車両法違反)の法定刑は、懲役6カ月以下または30万円以下の罰金です。しかし、田中被告には20万円の罰金刑が言い渡され、その後、確定しています。

「田中被告の責任が重いという指摘は、結果的に若本被告の罪を軽くするという側面しか持たなくなってしまいました。今回、死亡事故に匹敵するような重大事故を起こし、交通の前科は5犯になったにもかかわらず、彼は実刑を免れたのです。結局、誰も責任を取っておらず、違和感しかありません。残念でなりません」

娘の治療費・入院費、所有者から支払われたのはわずか20万円

 事故を起こしたジムニーは任意保険に未加入だったため、いまも損害賠償のめどは立っていません。

 被害者参加制度を利用した父親は、法廷で若本被告に直接質問しました。

「通常ではとても支払いきれる金額ではないが、被害者家族に泣き寝入りを強いるのか」

 すると、若本被告は、

「泣き寝入りさせません」

 と即答。さらに父親が、

「被告の言葉というのは信用するのが難しく、非常に不安が大きい。田中被告と相談するなり、計画的に支払っていくという意思を見せて欲しいが、できるか?」

 そうたずねると、

「はい、できます」

 と答えました。しかし、実際には、両者による支払いに関しての計画はおろか、賠償の分担等の相談すらしていないことが明らかになっています。

「その事実を知ったときは、大きな怒りと呆れが混ざったような感情が湧きました。被害者の治療費や入院費は本来、加害者が支払うべきものですが、相手側に支払い能力がないため、私たちの保険などを使って立て替え払いを続けてきました。

 でも、さすがにこちらも生活が苦しくなったため、弁護士を通して3カ月おきに、立て替え費用の返還を求めることにしたのです。2人で等分したら1カ月7~8万円です。しかし、それもすぐに支払われたわけではなく、若本被告から返還されたのは公判直前。田中被告からは、『事業がうまくいっていないため生活が苦しく、支払えない』という理由で、これまでに20万円のみが返還されたにすぎません」