車の所有者も共同正犯で相応の罪を負うべき、検察審査会に申し立て
前回の記事でも触れましたが、父親がマイカーにかけていた自動車保険には無保険車による事故にも対応できる「人身傷害補償保険」がかけられていたものの、その補償範囲は「契約車に搭乗中の事故のみ」に限定されていたため、本件のような歩行中の事故は支払いの対象外でした。
一方、運転者である若本被告の当時の妻(現在は離婚)が所有する車の任意保険には「他車運転特約」がついていました。これは、契約者や家族が他人名義の車に乗って加害事故を起こしたときに、自車の契約内容と同じだけの賠償を行えるという内容です。
ところが、保険会社からは、「業務性の該当可能性」を理由に、「支払いを留保する」との回答が寄せられました。つまり、田中被告と共に改造を行って試運転する行為は、一般的な契約とは異なり「業務」とみなされるため、保険金は支払えないというのです。
そんな中、今回の判決では、本件事故の「業務性」が否定されました。若本被告は自動車整備業を営んでいたわけではなく「業務ではない」と明記されたのです。この点については、今後の賠償交渉において大変重要なポイントになり、父親は流れが変わることに期待を寄せています。
「所有者の田中は自車の改造をおこないながら、ホイールナットの締め付け状況を点検せず、若本に運転させた過失によってこの事故を発生させました。事故の瞬間も別の車を運転してジムニーのすぐ後ろについて走行していたのです。
そこで私たちは、田中も共同正犯の罪責を負うべきと考え、さらに刑罰の重い『過失運転傷害容疑』で再起訴するよう、検察審査会に審査を申し立てているところです。本来は、裁判所が賠償問題も含め、被告側の不誠実な態度を考慮し、せめて刑罰を調整してくれればと思うのですが、それが無理なら被害者が自ら行動するしかありません」
検察審査会による1回目の審査は、今月にも行われる予定です。
あの日から1年7カ月、間もなく2度目の夏を迎えようとしています。
「本当は一日も早く、娘を入院先の病院から自宅に迎えたいのですが、介護のための住宅改造などに多額の費用がかかり、今も実現できていません。とにかく、幼い娘が家族と一緒に過ごす時間を奪われていることが、一番残念です……」
被害者と家族の先の見えない闘いは、今も続いているのです。