あの「アジア米騒動」でコメを求めて並ぶ人たちの姿と、政府の備蓄米を求めて並ぶ日本の映像を比べたら、大きな違いはない。少なくとも私にはそう映る。

コメの100%自給はもう無理だというのか

 ずっと続くコメの価格高騰と品薄感はどこから来るのか。「コメは買ったことがない」と発言して、事実上更迭された江藤拓前農水相が放出して競争入札を行った備蓄米は、そのほとんどが市場に出回らない。競争入札だけに、随意契約のように5キログラム2000円で売り出しては、赤字になるという理由もあるだろう。

 だが、それ以前にあるはずのコメが、どこかで出し惜しみされているのだとしたら、意図的な高値を演出していることになる。あるいは、需要と供給のバランスが崩れて、コメが不足しているのだとしたら、農政の失敗だ。いずれにしても、高値で主食が手に入らない、いまの状況は明らかに日本の食料危機である。

「食料自給は国家安全保障の問題であり、それが常に保証されているアメリカは有り難い」(It's a national security interest to be self-sufficient in food. It's a luxury that you've always taken for granted here in this country.)

 ブッシュ元大統領は、そうも語っていた。食料自給率が38%に低下して、食料輸入の大半を米国に頼っている日本を嘲笑うようにも聞こえる。だが、主食のコメだけは100%の自給を確保してきたはずだ。それが国家安全保障に直結していたはずだった。まさにその国家安全保障の崩壊が始まっている。

*1 「食糧」は主食穀物を、「食料」はそれ以外も含めた全体を表わす

*2 英文の和訳は鈴木宣弘東京大学大学院特任教授・名誉教授による