主食のコメすら自給できない国が、どのような事態に陥るのか。コメが高騰して食糧危機に陥った事例が、17年前にあった。それが「アジア米騒動」と呼ばれるものだ。もっとも国連では1億人が食糧不足の危機に瀕しているとして「静かなる津波」と表現していた。

輸出するほどコメがあるタイでコメ価格が高騰した理由

 2008年。この年は世界の小麦の価格が高騰した。それに続いてコメの価格も高騰するという現象が起きた。世界各地で暴動が起き、餓死者まで出る国があった。コメの輸入国だったフィリピンでは、コメを求めて市民の長蛇の列ができ、挙句にイモやバナナを主食の代わりにしなければならないような事態にまでなった。

 コメが主食で、当時は世界第1位のコメの輸出国であったタイでも、コメが高騰した。その当時の首都のバンコクを歩くと、あちらこちらのコメの販売店で「ここ3カ月でコメの価格が2倍になった」と耳にした。屋台で食べるタイの麺料理「クイッティアオ」も値上がっていた。麺は米粉からできている。外国に売るほどあるタイでもコメが高騰して、市民生活を圧迫していた。

 原因はインドにあった。インドは当時、タイに次ぐ世界第2位のコメの輸出国だった。そのインドがコメの輸出を全面禁止にしてしまったのだ。

 インドは世界にも稀な国で、主食と呼ばれるものが2つある。コメと「ナン」だ。ナンは小麦を焼いたものだ。

 当時はオーストラリアや欧州でも小麦が不作だった。そこにオイルマネーなどの投機筋も流れて、小麦の世界的な高騰が続いていた。日本でもパンや麺類の価格が値上がりしている。