第二に、わが国の30-10年国債スプレッドは、2022年11月にかけて急拡大し、1.22%まで上昇している。英国では、同年9月にトラスショックが発生し、国債利回りが急上昇していた頃である。

 当時の日本銀行は、わが国の10年国債利回りを一定の水準幅に抑え込むイールドカーブ・コントロール(YCC)を実施していた。そのため、10年国債利回りは、抑え込まれて低位で安定していたものの、市場の価格機能に基づき上昇した30年国債利回りは上昇し、これらの差が拡大したわけである。

 一方、現在はYCCが停止され、10年国債利回りの水準も、ある程度市場メカニズムに則り決定されるようになっている。それだけに2025年5月の30年国債利回りは、抑え込まれなくなった10年国債利回りを1.33%も上回るようになっている点には注意が必要であろう。2022年11月とは様相が異なっているからである。

避けたい超長期国債利回り主導の10年国債利回り2%超え

 現在、満期まで1年超の日本国債の時価総額に占める11年超の超長期国債の比率は、3割を上回っており無視できる存在ではなくなっている。今後は、30年国債などの超長期国債利回りの上昇が、10年国債利回りを引き上げるように作用するならば、日本経済にとっても大きな衝撃を与える可能性が出てくる。

 過去数百年の歴史をひもとけば、国債利回りは2%を分水嶺に推移してきた。日本国債の指標である10年国債利回りは、1997年に2%を割って以降、30年近くも2%を上回っていなかった。ただし、わが国の40年国債利回りは、約1年前の2024年4月に2%を上回っている。続いて30年国債利回りが2%を上回り、2025年4月には20年国債利回りも回っている。

 現段階では、10年国債利回りは1.5%程度であり、2%を上回るまでは差があるため懸念には及ばないかもしれないが、安閑とばかりはしていられないといえよう。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。

著者の近著『金利の歴史』(中央経済社)