中国広東省広州市にあるシーインの裁縫工場(4月1日、写真:ロイター/アフロ)

 米中両政府が2025年5月に発表した追加関税の一時的な引き下げ合意は、中国発の電子商取引(EC)大手「SHEIN(シーイン)」と「Temu(テム)」に、事業戦略を調整するための束の間の猶予を与えている。

 関税率が大幅に引き下げられたことで、両社が直面していたコスト増問題は一時的に軽減された。

 しかし、両社の急成長を支えてきた「デミニミス・ルール(少額貨物関税免除制度)」の適用停止措置は維持されており、ビジネスモデルの根本的な見直し圧力は依然として続いている。

関税145%→30%、ただし90日間 デミニミス復活は見送り

 米中両政府は5月12日、それぞれの相互・報復関税を115%ポイント引き下げることで合意した。

 これにより、米国が中国製品に課していた最大145%という高関税は、90日間の期限付きで30%まで引き下げられた。

 経済大国同士が100%を超える関税をかけ合う異例の事態はひとまず緩和された。

 しかし、この合意には、シーインやテムが低価格戦略の柱としてきたデミニミス・ルールの復活は含まれなかった。

 米国は、中国からの輸入品について、評価額800ドル(約11万円)以下の貨物に関税を課さない同ルールを5月2日に停止。

 これにより、シーインやテムは大幅なコスト増に見舞われ、値上げや米国での広告費削減に踏み切るなど、ビジネスモデルが根底から揺さぶられた。

 英ロイター通信によれば、専門家は、米中の合意内容にデミニミス問題が含まれなかったことから、「免税措置が復活する見込みは低い」と指摘する。