(写真:AP/アフロ)

 米インターネット通販最大手アマゾン・ドット・コムは、米国の地方部(Rural America)における配送ネットワークを拡大するため、2026年末までに40億ドル(約6000億円)以上を投資する。配送の迅速化と利便性向上により、小規模な町や地方の買い物需要を喚起するとともに、10万人以上の雇用創出を目指す。

ネットワーク3倍、配達時間「半減」

 アマゾンの発表によると、計画では地方部向け配送ネットワークの規模を現在の3倍に拡大し、新たに200以上のデリバリーステーション(宅配ステーション)を設置する。これにより、米北部アラスカ州、西部カリフォルニア州、南部テキサス州の3州を合わせた面積に匹敵する120万mi²(約310万km²)に広がる、1万3000以上の郵便番号地域で、年間10億個以上の荷物を追加で配送可能にするという。平均配達時間は現状から半減する見込みだ。

 この投資を通じて、新設されるデリバリーステーションで生まれる雇用(1施設当たり平均170人)に加え、配送業務を担うパートナープログラムなどを通じて、計10万人以上の新規雇用・業務機会を創出するとしている。

競合撤退の「逆」を行く戦略

 アマゾンは近年、有料会員プログラム「Prime(プライム)」の中核である迅速配送を強化しており、2日後配送を標準サービスとしたほか、翌日配送や当日配送の対象を拡大してきた。今回の投資はその戦略をさらに推し進めるものだ。背景には、他の物流事業者が採算性を理由に地方部への投資やサービス提供から撤退する動きがある。

 アマゾンのワールドワイド・オペレーション担当シニアバイスプレジデント、ウディット・マダン氏は声明で「多くの物流事業者が地方顧客向けサービスから撤退する中、我々は顧客の生活をより容易に、よりよくするために投資を強化する」と述べ、競合他社との差異化を図る狙いを強調した。英ロイター通信によれば、アマゾンは米小売り最大手ウォルマートや米ディスカウントストア大手のターゲットといった競合に対する優位性を保つために物流網に巨額を投じている。Prime会員向けサービスの核である迅速配送を地方部でも実現することで、顧客体験の向上と需要拡大を目指す。