半導体大手エヌビディア(NVIDIA)の2026会計年度第1四半期(2025年2~4月期)決算は、売上高が前年同期比69%増の440億6200万ドル(約6兆4200億円)となり、四半期として初めて400億ドルの大台を超え、8四半期連続で過去最高を更新した。
AI(人工知能)向け半導体の需要が引き続き旺盛で、データセンター部門が全体の9割弱を占めるなど、AI市場の急拡大を背景とした同社の独走ぶりがあらためて示された。
一方、純利益は同26%増の187億7500万ドル(約2兆7400億円)と高水準を維持したものの、8四半期ぶりに過去最高益の更新はならなかった。
米政府による対中輸出規制に関連する45億ドルの在庫評価損を計上したことが影響した。
ただ、同社の株価は、好調な業績と今後の見通しを受けて、決算発表後の時間外取引で5%以上上昇した。
AI半導体が牽引、データセンター部門9割に迫る
好調な決算を牽引したのは、AIの計算処理に不可欠なGPU(画像処理半導体)などを手がけるデータセンター部門だ。
同部門の売上高は前年同期比73%増の391億ドルと、過去最高を更新し、全社売上高に占める比率は88.7%に達した。
この比率は7四半期連続、80~90%の高水準で推移している。エヌビディアがAIインフラ投資の波に乗り、AI半導体市場で圧倒的なシェアを握っていることを裏付ける。
かつての主力事業であったゲーミング・AIパソコン部門の売上高は、前年同期比42%増の37億6300万ドル、自動運転技術など車載向け半導体やロボティクスを含むオートモーティブ部門の売上高は、72%増の5億6700万ドルだった。
中国市場の逆風と新市場開拓
好業績の一方で、米政府による高性能AI半導体の対中輸出規制が引き続き事業の重しとなっている。
エヌビディアは決算説明会で、2025年2~4月期は25億ドル相当の「H20」チップを出荷できなかったと明らかにした。
H20は対中規制を回避するために中国向けに性能を落とした、Hopper(ホッパー)アーキテクチャーのGPUである。
同社が示した2025年5~7月期の売上高見通しは450億ドル(プラスマイナス2%)。これには対中輸出規制による約80億ドルの収益機会損失が織り込まれている。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、同社は決算説明会で、「最新の禁輸措置が2年前のHopper製品群さえも対象としており、中国販売の選択肢が限られている」と述べた。
ジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)は「中国販売が制限されることは業界にとって長期的な影響を及ぼす可能性がある」と警告した。
こうした中、エヌビディアは新たな市場開拓も進めている。
サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など、自国でのAIインフラ構築を目指す国々との「ソブリンAI」に関する契約がその一例である。