在庫補充の好機、大量輸送にシフトか

 それでも、関税率が145%から30%へと大幅に下がったことは、シーインやテムにとって一時的な追い風となる。

 専門家は、両社がこの90日間を利用し、比較的低コストで米国内倉庫の在庫を補充するとみている。

 米中西部オハイオ州のマイアミ大学(Miami University)でサプライチェーン(供給網)を専門とするヤオ・ジン准教授は、「これはシーインとテムにとって米国内在庫を補充する絶好の機会だ」と述べる。

 ジン氏は、これまでのような個別航空便による消費者直送型(D2C)ではなく、「コンテナ船による大量輸送で米国に商品を送り、次の関税引き上げの可能性に備えて在庫を積み増す可能性が高い」とみる。

 テムは既に、ビジネスモデルを転換する動きを見せている。

 米国内での販売をすべて現地の販売事業者が担うようになったと発表しており、米国のウェブサイトでも国内倉庫にある製品を目立たせて表示している。

 一方で、貿易自動化プラットフォーム企業のCEO(最高経営責任者)、ヒューゴ・パクラ氏は、一部の低価格商品については中国からの直送方式でも価格競争力が保たれる可能性があると指摘する。

「一部の商品は、小売価格に30%を上乗せしても、米アマゾン・ドット・コムや他のどこよりも安いため、意味がある。本当に非常に安価な製品であれば、中国からの直接配送を続けられる」と語る。

根本課題は残存、90日後の不透明感も

 今回の関税引き下げは、シーインやテムにとって一時的な態勢立て直しの機会となるものの、デミニミス・ルールの停止という根本的な課題は解決されていない。

 低価格戦略を維持しつつ、サプライチェーンを再構築するという難題に直面している状況に変わりはない。

 さらに、期間終了後には関税率が54%(基本税率10%+違法薬物対策関税20%+再適用される上乗せ分24%)となる可能性も指摘されている。

 先行き不透明感は依然として強い。

 アマゾンのサードパーティー事業者(出品者)なども含め、各社は予断を許さない状況下で、引き続き対応を迫られる。