『エンジェルフライト』(NHK)
2位は『エンジェルフライト』。登場するのは国際霊柩送還士たち。海外で亡くなった人の遺体を日本に航空搬送する一方、日本で他界した外国人の遺体を母国の遺族へ届ける。
主人公は米倉涼子(49)が演じる伊沢那美。国際霊柩送還会社「エンジェルハース」の社長だ。かといってオフィスでふんぞり返っているわけではない。プレイングマネージャーである。

ときには命懸けの仕事になる。第1回ではフィリピンのマニラで暴行死した日本人青年・杉原陽平(葉山奨之)の遺体が病院から消えたため、那美と新入社員の高木凛子(松本穂香)が探す。陽平が住み、暴行現場でもあるスラム街に入る。地元民さえ恐れる場所だ。
もっとも、陽平の父親で建築家の辰彦(杉本哲太)は、遺体を探す必要はないと言った。陽平は高校を中退したあと、職を転々とした。SNSで炎上騒ぎを起こしたこともある。そんなことから、親子の縁を切っていたからだ。
だが、母親の佐千恵(麻生祐未)の反応は対照的。幽鬼のような顔で陽平の幼いころを思い出し続けたあと、辰彦に「どうして私の子供を置いていかなきゃいけないのよ!」と食ってかかる。那美に遺体搬送を依頼したのも佐千恵だ。
那美は陽平の遺体を見つけた。スラム街の仲間たちが金を集めて陽平の葬式を出そうとしていたのである。陽平は仲間と農園をつくろうとしていた。家を出てから4年。辰彦になんとかして認められたくて躍起になっていた。
陽平を暴行したのはギャングだった。しかし、これは陽平がギャングに奪われた財布の奪還に執着したせいでもある。それなのに財布には金が入っていなかった。入っていたのは陽平が家を出た際、佐千恵が渡した「いつか帰ってきて」と書かれたメモだけ。これらを調べ上げたのも那美だ。
棺に入って帰国した陽平に佐千恵は泣きはらした顔で「お帰り」と声を掛ける。那美から事情を知らされた辰彦も遺体に向かって「がんばったな」と、ねぎらった。
会社に入って間もない凛子は、那美がこの仕事に懸命になるのが不思議でならない。凛子が本人に問うと、こんな答えが返ってきた。
「死を扱うということは生を扱うってことだろ。残された人たちは前を向いて生きていかなきゃならない。そのために、せめて最後のお別れをさせてあげて、とことん悲しんでもらう。それが私たちの仕事。やれるだけのことはやらないと。大切な人にお別れも言えないなんて、つらすぎっじゃん」
このドラマの本質がこのセリフの中に集約されていた。