『しあわせは食べて寝て待て』(NHK)

 トップは『しあわせは食べて寝て待て』。5月27日に放送を終えた。観ると心温かくなるものの、凡百の癒しドラマではなかった。現代の悪意もあぶりだす一方、生きるヒントが散りばめられていた。

 桜井ユキ(38)が演じた主人公の麦巻さとこは38歳で独身。建設会社で働き、賃貸マンションで暮らしていたが、どちらも第1回で失う。膠原病に罹ったことが発端だった。

『しあわせは食べて寝て待て』で主人公・麦巻さとこを演じた桜井ユキ(写真:産経新聞社)

 この病気は人によって症状が違うが、麦巻の場合は寒いとたちまち風邪をひいてしまう。疲労やストレスなどにも弱い。

 麦巻はしばらく療養したのち、建設会社に復職した。ところがサポート役を務めるはずの後輩から嫌がらせを受ける。こんな陰口を叩かれた。

「麦巻さんは時短出勤。私は休日出勤。まともに働けないのなら、来るなっていうの」

 あまりに酷い言葉だが、残念ながら現実離れはしていない。1990年代半ばから言われ始めた自己責任社会には功罪あり、罪の部分として互助の精神が薄らいだ。

 この後輩から転職を強いるようなメールも大量に届くようになった。麦巻は退職を決意する。「元気だったころは理不尽な扱いに立ち向かえる人間だった」(麦巻)。体が弱ると心も弱る。

 転職先は従業員4人のちっぽけなデザイン事務所。週に4日勤務するパートで、給料は安いが、体のことを考えると、無理はできない。

 直後に住んでいる賃貸マンションが更新期を迎えた。更新料が11万円と高いため、引っ越すことにする。兄と暮らす母親・惠子(朝加真由美)は助けてくれない。それどころか、責められた。

「なんで引っ越すの。だから会社を辞めないほうがいいって言ったじゃない」

 麦巻は疎外感を募らせる。