検察は、金会長が北朝鮮に現金を渡したのは、李在明・京畿道知事(当時)の北朝鮮訪問の代価を代納したためだと判断し、李在明氏の右腕と呼ばれた京畿道平和副知事の李ファヨン氏を事件の主犯として起訴した。

 李ファヨン氏は1審に続き、2審でも懲役7年8カ月の重刑を言い渡された。その後、李在明候補も検察によって起訴されたが、李氏に対する裁判は大統領選挙以後に再開される予定だ。

討論会では対日政策はスルー

 討論会では他に、朴槿恵政権時代に韓国に配備されたTHAADについて、李在明候補が「THAADは米国の防御のためのものだ」と反対した部分に対する論争と、金文洙候補が主張する韓国の核能力強化についての論争がなされたが、外交安保問題と関連して日本の「に」の文字も出なかった。それだけ韓国の大統領選挙で日本は「眼中にいない」ということだろう。

 実際、李在明候補の外交安保補佐官たちに関して、韓国メディアから「日本専門家が見当たらない」という分析がなされている。李在明・選挙キャンプに集まった外交安保専門家の代表的な顔ぶれは、魏聖洛(ウィ・ソンラク)元ロシア大使、金鉉宗(キム・ヒョンジョン)元大統領府国家保安室第二次長、そして李鍾奭(イ・ジョンソク)元統一部長官だ。

 魏聖洛元大使は代表的なアメリカンスクール出身で、米韓同盟を韓国外交の根幹と見る、いわゆる「同盟派」出身だ。

 一方、李鍾奭元統一部長官は、「盧武鉉政権の均衡者論」を提唱した人物で、代表的な「自主派」だ。自主派とは米国などの強大国が主導する秩序や彼らの朝鮮半島政策に受動的に対応する外交ではなく、韓国がイニシアチブを持って「自律的」な外交政策を展開しなければならないという理論だ。そのため、自主派が勢力を伸ばす政権では、常に米国との不協和音、日本との摩擦が発生することもある。

 さらに金鉉宗氏は通商専門家だ。幼い頃から外交官である父親の影響で外国生活をし、米国で弁護士資格を取得した。しかし、民族的な性向が強く、保守からは「反米・反日主義者」という批判を受けている。

 米韓自由貿易協定(FTA)を締結する上で中心的な役割を果たし、トランプ米政府との通商交渉を陣頭指揮するものとみられる。ただ、自ら「盧武鉉政権時代に推進していた日韓FTAを中止したことが最大の業績」とアピールするほど、日本に対しては敵愾心を見せている。李在明政権発足後、大統領府安保室長が有力視される金鉉宗氏は、日韓FTAを推進するという共に民主党の一部の構想において、最も大きな障害と見られる。