世界4位の軍事力を誇るインド、核戦力で拮抗するパキスタン
インドの軍事力は想像以上に強大だ。米国の軍事力調査機関であるグローバルファイアーパワー(GFP)が調査した軍事力ランキング(2024年)では、米国、ロシア、中国に次いで世界4位につける。
英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)の『ミリタリーバランス(2025年版)』によれば、正規軍の総兵力は147万人と中国の203.5万人に次ぐ世界2位の大所帯で、3位の米国(131.6万人)をも超える。対峙するパキスタンと比べてもその規模は圧倒的で、軍事費で約9倍、陸軍兵力で2倍、潜水艦で3倍、戦闘機・攻撃機で約1.7倍の開きがある(別掲表参照)。

加えて、空母2隻や核弾道ミサイルを海中発射できる弾道ミサイル原潜(SSBM)2隻など、国力的にパキスタンには保有が無理な強力アイテムもそろえる。通常戦力ではパキスタンはインドに到底かなわない。
だが、パキスタンの核戦力はインドに引けを取らないほど強力だ。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の『イヤーブック2024』によれば、核弾頭(爆弾)の推定保有数はインド172発に対し、パキスタン170発と拮抗する。ちなみに、核不拡散条約(NPT)で核保有が認められる国連安保理の常任理事国であるイギリスの225発、フランスの280発と比べても大差ない。
インドは、陸軍では大陸間弾道ミサイル(ICBM、射程6000km)を筆頭に各種弾道ミサイル、海軍ではアリハント級SSBN2隻(射程3500kmの弾道ミサイル搭載)、空軍は核爆弾搭載の戦闘機・攻撃機(巡航ミサイルも開発中)をラインアップする。
一方、パキスタンも、陸軍で弾道ミサイル(射程3000km弱)、空軍で戦闘機搭載の爆弾、巡航ミサイル(射程600km)を保有する。通常戦力で大きく水をあけられるインドに対し、核抑止力で安全保障を維持するのが目的だ。
今回、幸いにも両国指導者の自制が働き、核戦争へとエスカレートすることはなかったが、「核保有は戦争を抑止する」と言い古されてきた理論が、すでに破綻していることを念押しした格好にもなった。
実際、核保有国同士の軍事衝突は何度も起きており、1969年の中ソ国境紛争を皮切りに、中印両国は2020年、2022年など、何度も国境で武力衝突を展開し、犠牲者を出している。
印パ間でも2019年に今回と同様、カシミールのインド実効支配地区で起きた爆弾テロの報復として、インドがパキスタン本国を空爆し、空中戦も起きている。
こうした状況を考えると、21世紀に入り軍事的関係を急速に深め、準軍事同盟同士のパキスタンと中国が、さらに結束を深めて互いの宿敵・インドに軍事的対決を挑むというシナリオも現実味を帯びる。
近い将来、今回の件がこじれて、最悪の場合インドと中国・パキスタン同盟との間で核戦争が勃発する可能性も決して否定できないだろう。