露呈した“老兵”インド空軍の「慢心」

 インドの航空戦力(空軍と海軍航空隊)を見ると、戦闘機・攻撃機は約780機と、パキスタンの455機を大きく引き離す。だが内訳を見ると最新鋭のラファールは目下導入中で、わずか36機に過ぎず、逆に“老兵”ぶりが目立つ。

 現代戦でまだ通用するものの、早急に近代化改修が必要な機体が400機以上(ロシア製Su-30 約260機、同MiG-29 約100機など)もあり、割合は全体の半数以上に達する。

 加えて半世紀以上前のベトナム戦争で活躍した、旧ソ連製MiG-21が約80機もいまだ現役だが、現代戦で生き残るのは極めて困難だろう。

 肝心のAWACSは、高性能のA-50EIファルコン(最大探知能力500km)3機と、ファルコンを補完する小型のEMB-145ネトラ(射程300km)2機の計5機に過ぎない。

 現代の空中戦は前述したBVR戦闘が主流になりつつあり、AWACSなしでの出撃は自殺行為に等しい。敵を視界に置きつつ、互いに機関砲やAAMを撃ち合い、ドッグファイトを演じるという光景は、もはや映画の中だけの話だ。また、インド空軍はラファールとAWACSとの情報共有が未熟なのでは?との推測もある。

 対するパキスタン空軍は、J-10(20機)、JF-17(約155機)、米製F-16(75機)が主軸となっている。

 F-16の大半は初期タイプで、電子機器の大幅更新が必要だが、西側では第一線で活躍中の機体である。またJF-17は2009年に量産が始まった新鋭機で、一部の機体はPL-15を運用できる。つまりパキスタン空軍は戦闘機・攻撃機455機のうち、実に半数以上の約250機が現代戦で通用する戦力と言える。

パキスタンが中国と共同開発したJF-17戦闘機。第4世代の新鋭機で、最新バージョンではPL-15ミサイルを使用可能(写真:パキスタン空軍ウェブサイトより)

 さらにAWACSは中国製のZDK-03(4機、射程400km)と、スウェーデン製サーブ2000(8機)の計12機で、J-10や一部のJF-17とBVR戦闘用の情報共有も可能だと見られている。

 2種類のAWACSの性能はともに中程度だが、機数の多さは優位だろう。稼働数を8~9機と見た場合、戦闘空域に最大4~5機、常時1~2機が滞空できる計算で、パキスタンは切れ目なく戦場の上空を広範囲に監視できる。今回、インド軍機をいち早く見つけ、長距離が自慢のPL-15をお見舞いする態勢を整えていたとも考えられる。

パキスタン空軍のサーブ2000AWACS(早期警戒管制機、写真:パキスタン空軍ウェブサイトより)
パキスタン空軍のZDK-03AWACS(写真:パキスタン空軍ウェブサイトより)

 このように戦闘機の数ではインドが上回るが、質的にはパキスタン側に軍配が上がる。2019年のバーラーコート空爆の時の空中戦で、インドの“老兵”MiG-21が、一世代上のパキスタンのF-16を撃墜(その後MiG-21も撃墜される)して伝説となったが、「パキスタン空軍など敵ではない」との慢心が油断につながったのではないかと見る向きもある。