ビットコインは新たな国際基軸通貨の選択肢になるか

 米国を中心とする金融システムへの信認が揺らぐ中、ビットコインを資産ポートフォリオに組み込む動きが各層で加速している。そうした潮流の先に見えてくるのが、ビットコインが国際通貨体制における新たな選択肢として浮上する可能性である。

 1971年のニクソン・ショック以降、米ドルは金との兌換性を失いながらも、国際的な外貨準備において支配的地位を維持してきた。しかし現在、トランプ政権による通商強硬策や財政拡張路線の影響で、基軸通貨としてのドルの信認には陰りが見え始めている。さらに、各国の中央銀行は米国債への依存を見直しており、国際金融における「安全資産」としての地位が危ぶまれている。

 こうした状況の中で、ビットコインは新たな準備資産として国際的な注目を集めている。特に、脱ドル化を進める新興国や制裁下にある国々では、ビットコインを通貨主権の確保や対外依存の低減手段として捉える動きが強まっている。

 2024年12月、ロシアのプーチン大統領が米ドルの代替資産としてビットコインに言及したことも、この流れの延長線上にあると考えられる。

 ここで改めて考えるべきは、なぜ米国は暗号資産、なかでもビットコインの推進に舵を切ったのかという点だ。

 トランプ大統領は「米国がやらなければ他国がやる」と繰り返し発言しており、それはイノベーション推進の観点だけではなく、基軸通貨国としての戦略的危機感を表している。

 他国が先んじてビットコインを国家備蓄とし、通貨体制の主導権を握るような事態になれば、ドルの覇権は揺らぎかねない。だからこそ米国は、ビットコインを積極的に取り込み、自国が世界最大の保有国となることで、新たな通貨秩序においても中心的地位を確保しようとしているのである。

 もっとも、ビットコインが即座にドルに代わり国際基軸通貨となるには、なお多くの課題が残されている。価格の変動幅は依然として大きく、各国の規制環境も統一されていない。マネーロンダリングや不正流出といったリスクも払拭されていない。

 しかし、現行のドル体制が構造的に揺らぎつつある中で、国家、機関投資家、企業といった多様な主体が準備資産を分散させようとしているのは確かな流れである。こうした変化が進めば、ビットコインは通貨性を備えた「デジタルゴールド」として、国際金融システムの一角を担う存在となる可能性が高まっていくだろう。

 今回のビットコインの史上最高値更新は、単なる市場の熱狂ではない。その背後には、通貨体制が歴史的転換点を迎えているという、より深層的な地殻変動が潜んでいるのかもしれない。

※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。