多様なプレイヤーによる買い

 ビットコインの資産クラスとしての成長を象徴するのが、機関投資家や上場企業、そして米国内の州政府といった、長期運用を重視する主体の参入が相次いでいるという事実である。現在の価格上昇は、短期的な投機によるものではなく、資産運用の枠組みの中にビットコインが組み込まれ始めていることを示唆している。

 機関投資家の動きは特に顕著だ。2024年以降、米国でビットコイン現物ETFが相次いで承認されたことで、年金基金や保険会社、大手資産運用会社による資金流入が加速した。直近、ブラックロックのIBITは運用資産残高が9兆円規模にまで拡大し、米ETFランキングの上位5位に位置するほどの人気を見せている。

 企業の動きも加速している。米マイクロストラテジーは継続的に社債を発行してビットコインを買い増しており、日本のメタプラネットも同様の戦略で積極的な取得を進めている。いずれも中長期的な通貨のインフレリスクを回避するための動きであり、短期的な利益を狙った投資とは一線を画す。

 こうした姿勢は他の上場企業にも波及し、2025年に入ってからは新たにビットコインを取得する企業の数が着実に増えている。

 さらに注目されるのが、米国におけるビットコインの準備資産化である。2025年3月、トランプ大統領は「戦略的ビットコイン備蓄」の創設を指示し、司法省などが押収したビットコインを国家の準備資産として長期保有する方針を打ち出した。

 あわせて議会でも、財務省や連邦準備制度による保有を含む法案の提出が相次いでおり、制度的な備蓄化の議論が進んでいる。

 この連邦政府の方針に呼応するかたちで、州レベルでもビットコインを準備資産として位置づける動きが広がっている。2025年5月にはニューハンプシャー州が全米で初めて、州の準備資産にビットコインを正式に組み入れる法案を可決した。今では20以上の州で類似の法案が提出・審議されており、今後は地方政府によるビットコインの分権的保有が常態化する可能性もある。

 このように、ビットコインを中長期の資産として保有する主体が着実に増えている現状は、価格上昇の背後にある資金の質を示すものである。もはやビットコインは、ボラティリティを売買するだけの投機的資産ではなく、信頼できる長期的価値の保存手段として定着し始めているのである。