これにスンニ派の過激派テロ組織であるイスラム国(IS)も介入したため、内戦が泥沼化していった。そのため、第二次大戦後、最悪の難民が発生した。
2015年9月30日、ロシアはアサド政権を支援するために、ISに対して空爆を行った。ロシアの介入の大義名分は、国際テロ集団ISを壊滅させるためだということであった。
第一次トランプ政権の失敗
アメリカでは、2017年1月にトランプが政権に就き、2018年4月にはトマホークミサイルでアサド政権側の施設を攻撃した。しかし、2019年になると、それまでのアサド政権打倒という政策を転換して、ロシアと共にISを掃討することを最優先にするとしたのである。そして、この年10月には、トランプは、シリア北東部から米軍を撤退させると表明した。
こうして、トランプ政権がシリアから実質的に手を引き、ロシアはアサド政権を継続させることに成功したのである。
ヨーロッパ諸国は、シリア内戦から逃れてくる大量の難民で苦労しており、ロシアの介入はシリアの安定化をもたらし、難民を減少させるとして歓迎された。ISの活動は、国際社会に大きな混乱を生んでおり、その掃討という点では、アメリカとロシアの利害は一致したのである。
アメリカの撤退により、中東におけるロシアのプレゼンスが高まった。シリアから利用を認められているタルトゥース港は、ロシアにとっては地中海に面した唯一の海軍基地である。同じくヘメイミーム空軍基地は、ロシアにとってはアフリカ大陸への中継拠点としての利用価値が高い。