そのためには、目標とする敵戦闘機をNEZ(No Escape Zone)と呼ばれる回避不可能な領域で確実に撃墜するとともに、その外側領域において目標に回避機動を強要するだけの十分な機動、追尾性能を持っていなければなりません。
また、戦闘が1対1で行われることはまずなく、双方とも多数機で戦闘することもあり、狙ったタイミングで確実に仕留めることも重要です。
そうしたことを考えた場合、PL-15が今回想定したマッハ3で再点火するケースで考えても、AMRAAMがNEZとしていると思われる距離50キロ程度、それ以遠の目標への十分な命中精度を保ち、回避を強要できる距離へのミサイル到達時間で評価すると、PL-15は固体ロケットモーターのミサイルよりも長い時間を要しています。

これは、戦術的には極めて大きなマイナスです。PL-15は、目標が回避機動を行った場合に命中を期待することが現実的ではない100キロほどの距離で、やっと固体ロケットモーターのミサイルに追いつく試算になります。
あくまで比喩的に言えばですが、PL-15は、3次元シューティングゲームにおいて、弾速が遅く使い難いものの、長距離をしつこく追いかけてくるミサイルと言えます。
実際に運用する場面を想定すると、必ずしも使いやすいミサイルとは言いがたい側面があるのです。
また、上記の性能予想は、あくまで遠距離の全く機動していない場合にミサイルを飛翔させた場合の予想数値です。カタログスペックでの最大射程を算出するための数値予想でしかないということです。
目標が機動すれば、ミサイルの機動も必要になり、その際にどの程度の速度低下(速度エネルギーのロス)をするのかまではデータが少なく予想できません。現時点では、警戒を要することは間違いないものの、AMRAAMやAAM-4を凌駕しているかは分かりません。