
トランプ米政権が、インド政府に対し、米オンライン小売大手アマゾン・ドット・コムや米小売り最大手ウォルマートなどへの市場の完全開放を迫っていることが明らかになった。関税発動を交渉材料に、急成長する1250億ドル(約19兆円)規模のインド電子商取引(EC)市場で、米企業が国内企業と「公平な競争条件」で事業展開できるよう要求している。米印間で進行中の貿易協定交渉の焦点の1つとなっており、インド太平洋地域における経済覇権や、巨大市場のルール形成にも影響を与えそうだ。
米、印EC市場の「壁」撤廃要求 公平な競争条件求め
英フィナンシャル・タイムズ(FT)や英ロイター通信が業界幹部や米政府当局者の話として報じた。現在、インドにおいて外資のEC企業は、消費者に商品を直接販売することができず、他社(主にインドの事業者)が出品するためのプラットフォーム「マーケットプレイス・モデル」を運営することのみが許されている。加えて、小売り分野への対内直接投資(Inward FDI)にも制限がある。米政府はこれらを「非関税障壁(non-tariff barrier)」と呼んでいる。
これに対し、インド大手財閥リライアンス・インダストリーズなどは、自社で在庫を持ち、ECと広範な実店舗網を連携させた販売が可能だ。米国側はこうした状況を問題視し、アマゾンやウォルマート(インドEC大手フリップカートを傘下に持つ)が、リライアンスなどインド国内企業と同じ条件で競争できる環境整備を強く求めている。具体的には、在庫保有や直接販売の自由化、FDI規制の緩和などが要求に含まれるとみられる。この要求は、食品や自動車分野なども含む広範な米印貿易協定交渉の一環として進められている。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏やウォルマートCEO(最高経営責任者)のダグ・マクミロン氏は、トランプ政権との接点を持つ。ベゾス氏は2025年1月の大統領就任式にも出席するなど、トランプ氏と一定の関係を築いてきた。マクミロン氏は大統領就任に先立ち、トランプ氏の私邸「マール・ア・ラーゴ」で会談した業界リーダーの1人であり、先ごろは関税について協議するため、ホワイトハウスを訪れた。米政権と米大手企業が連携し、インド市場の開放を迫っている構図がうかがえる。