人口確保のため、乱開発に手を貸す自治体

 集住化を図るいっぽうで大切なことは市民の足、移動手段を確保することです。

 コンパクトシティの代表的な事例である富山県富山市はLRT(Light Rail Transit)という次世代型路面電車システムを採用。市民が自由に外に出て移動ができる手段を用意しています。同じような試みは今、全国的な拡がりを見せています。 

2006年に開業した富山市のLRT(写真:共同通信社)2006年に開業した富山市のLRT(写真:共同通信社)

 2023年3月末時点で立地適正化計画について具体的に取り組むことを表明した自治体は747都市におよび、そのうち568都市が計画の作成、公表を行っています。また作成、公表を実施した自治体のうち291都市で防災方針についても記載を行っています。

 ただいっぽうで、立地適正化計画を提出して本格的なコンパクト化を進めなければならないにもかかわらず、多くの自治体で市街化調整区域という基本的には住宅の建設ができない地域においての宅地開発を認めている、あるいは推進しているというのが実態です。

 都市計画法には開発許可制度の内容が定められていますが、この法律の第34条11号ならびに12号に、次のような記載があります。条文は面倒くさい書きぶりですので要約します。

 11号:市街化調整区域であっても、市街化区域に隣接近接しているエリアで50棟以上の建物が連坦(続いて建っている)しているようなところであれば、環境保全などの制約がなければ建物を建ててもよい

 12号:市街化調整区域であってもその土地に20年以上暮らしている6親等以内の家族がいて、自分はそこに居住しておらず当該地に家を建てたい場合は認められるケースがある

 要は市街化調整区域の隣接、近接地であるとか、親戚が住んでいればかなりの確率で家を建てることができるということです。それどころか、人口維持を図りたい自治体のなかにはこの条文をかなり柔軟に解釈してむしろ宅地開発を幅広に認めているところが多いのが実態です。

 何とか人口減少を止めたいがゆえに、都市計画なんぞはとりあえず無視して乱開発に手を貸す自治体が意外に多いのです。