「ポツン」ばかりでは自治体財政が持たない
現在、国では国民が住む場所を集約化しよう、という方針を掲げています。2014年8月に、都市再生特別措置法が改正され、立地適正化計画の策定を各自治体に求めるようになりました。
その趣旨は、人口減少、高齢化の状況を踏まえ、地域のなかで市街地、公共街区など拠点整備を行なったうえで、都市機能誘導地域、居住誘導地域を定めて、生活サービス機能の集約、地域に住む人々の集住を促進しようとするものです。こうした考え方をコンパクト化と呼びます。
地域内で際限なく広がってしまった人口を再び市街地に呼び戻そうという動きです。コンパクトにすると言うと、縮小均衡させるイメージが強くなってしまうのですが、逆の表現をすれば、人の密度を上げるということです。
1カ所に多くの人が集まると、そのこと自体は窮屈な話ですが、1つのサービスを短時間に狭い空間で一斉に提供できるメリットがあります。
仮にみんなが分散してポツンと一軒家だらけになってしまうと、1つのサービスを提供するのに多大なコストがかかってしまいます。現在各自治体は人口減少と、高齢化で稼ぐ人が減り、税収が落ち込んでいます。市民に均質なサービスを行なおうにも、居住エリアが広大だと、提供効率が格段に落ち込んでしまいます。
特に高齢社会になれば、介護や福祉といった人手を要するサービスが中心になります。市民を1カ所に集住させることで、適切なサービスを提供できます。
また民間レベルでも第3次産業であるサービス業は一定の範囲のエリアに一定の数の顧客がいることで、サービスが効率的に提供できます。ちなみにコンビニエンスストアが出店する際に基準となるのが半径500m圏内に3000人の商圏人口があることだと言われます。1haあたり40人くらいです。この程度の集住が実現できれば、少ない人数でも街としての運営ができるのです。
人が集住することで消費が生まれやすくなり、消費が活発化すれば新たな投資を呼び込むこともできます。人の出入りによって経済が循環することはこれまでにお話しした通りです。
また電気、ガス、水道、通信などのインフラ設備の整備もコンパクト化することによって維持管理コストの削減につながります。
今後はこれまで一生懸命整備してきた道路、橋といった公共施設も、老朽化にともなう改修、更新が課題になります。ほとんど誰も住んではいないが、ポツンとひとりだけが住んでいるがために、予算を振り向けなければならない事態を避けていかなければ、自治体財政を持たせることはできなくなっているのです。