(2)むしろ役職定年制度の廃止でポストオフ年齢が早くなる

出所:筆者が生成AIを使って作成
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 年齢で一律にポストから外す役職定年はジョブ型の考え方になじまず、少なくとも中長期的には廃止の方向性だ。役職定年年齢は、一般的には50代後半に設定されている。

 役職定年が廃止されると、いったん管理職になれば60代もずっと管理職でいられるはずだと考える人が多いかもしれない。確かに、そのような人もいるだろう。しかし、大半の管理職はおそらく、そうはならない。むしろ、役職定年がある場合よりも早く、40代後半でポストオフになる可能性がある。

 それはなぜか。

 先の(1)では、一般社員から管理職への登用確率が下がる話をしたが、それは、課長から部長に昇進する場合も、そのまま当てはまる。順番待ち登用がなくなるため、「ふつうの課長」の部長への昇進確率も、同様に下がる。

 ファーストラインの管理職である課長の登用適齢期は、おおむね35~40歳程度。部長に昇進しない「ふつうの課長」が、役職定年がないからといって、定年の60歳や65歳まで20年以上も、同じポジションに留まることを想像できるだろうか。

「ふつうの課長」が標準的な成果を上げ続けているとしても、その間に「ふつうの課長」よりも優秀な第一選抜人材が現れるだろうし、そうでなくては、組織の成長もないだろう。

 政府の「ジョブ型人事指針」から事例を見てみよう。

「ポジションへの登用・ポジションオフにあたっては、『Betterな人材』への入れ替えを意識している(リコー)」という考え方が、ジョブ型における管理職の配置のあり方を端的に表している。

「Betterな人材への入れ替え」は、非常に強烈なメッセージだ。これは、ローパフォーマーを外すというだけでなく、ほぼ目標を達成しているミドルパフォーマーであっても、より大きな成果を挙げられそうな候補者がいれば、ポストオフの対象になるということだ。

「管理職は、ポジションの変更により等級の昇降が発生する仕組みであり、実際に等級の昇降を伴うポジションの変更は日常的に行われている(レゾナック・ホールディングス)」というように、役職定年がなくなったからといって、定年まで管理職ポストが約束されているわけではない。

 マンネリ防止・組織活性化の観点からも、同一部署の課長在任期間が長すぎることは健全とは言い難い。10年でも長すぎるのではないだろうか。とすると、35~40歳で課長登用された「ふつうの課長」は、40代後半でポストオフになっても不思議はない。役職定年が廃止されても、むしろ、ポストオフ年齢は早まる可能性が高い。